4人が本棚に入れています
本棚に追加
「お嬢様の分だけ、ご用意すればよろしいですか?」
「いいえ、ふたり分用意してちょうだい。……今日はじいやと一緒にアフタヌーンティーを楽しみたいの」
思わぬ言葉に、幸之助は目を丸くする。
「……このわたくしめと、でございますか!?」
「ええ。……だって、じいやはいつも私のために、いろんなおいしいものを用意してくれるのに、自分ではひとくちも食べたことないでしょう?……そんなの、おかしいから、一緒に食べたいなと思ったの」
一介の執事にまで心を配ってくださるなど、なんとお優しい佳南美お嬢様。
「お嬢様……、じいは……じいは嬉しゅうございます……」
きっと佳南美お嬢様は、神から人間界に遣わされた、大天使にちがいありません。
「ほら、じいや、泣かないで。……せっかくのお紅茶が冷めてしまうわ。はやくいただきましょう」
目元をハンカチでぬぐい、幸之助は笑顔で答えた。
「……かしこまりました。お嬢様」
白金川家のじいやーイーツは、これからも不可能を可能に変え続ける。
大切なお嬢様のために、いつまでも、ずっと。
【おわり】
最初のコメントを投稿しよう!