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……シュタッ!
幸之助は白金川家の庭園へと、エレガントに着地を決めた。
時刻は11時59分と10秒。
お嬢様にアフタヌーンティーセットをお届けするのが最優先。
片付けは後回しにしよう。
パラシュートを外し、ヘルメットを脱ぎ捨て、景観を損ねぬよう、生け垣の陰に押し込んでおく。
目指す佳南美お嬢様は、テラスのテーブルに腰かけている。
すたすたと歩きながら、身だしなみを整え、アフタヌーンティーセットが入った袋を抱えなおす。
「お嬢様、お待たせいたしました」
深々と一礼したその瞬間、時計の針は正午12時0分0秒を指していた。
「さすがじいや。今日も時間きっかりね」
「もったいないお言葉にございます。こちらでお召し上がりになりますか?」
「ええ。……お願い」
「かしこまりました。すぐにご用意いたします」
最高級のダージリンティーが入ったポットに、ティーコゼーをかぶせ茶葉を蒸らす間に、アフタヌーンティーセットの中身を3段のティースタンドに並べていく。
……すると。
ごぎゅるるるるーっ。
「あらやだ……、はずかしいわ」
「じいの耳には、小鳥のさえずりしか聞こえておりませんよ」
「もう、じいやったら!」
かわいいかわいい、佳南美お嬢様。
頬を真っ赤に染めて、恥ずかしがるその姿は、まるでほころび始めたバラのつぼみのよう。
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