嘘から出た真を真に

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 四月一日、午後零時半。  篠宮蓮弥(しのみやれんや)のスマホが『キンコーン』とメッセージを受信した旨の通知を訴えた。  篠宮は、ブロッコリーを摘まんでいる箸を弁当箱に立てかけて、代わりに、弁当箱の横に置かれているスマホを取り上げた。  スマホの画面をタップすると電源が入り、数あるアイコンの内でも、唯一メッセンジャーアプリだけが未読を告げていた。  篠宮は何用だ? と感じながらアプリを起動させると、差出人は隣人の三宅倫(みやけとも)からで、メッセージの内容もほんの一言だった。 『蓮弥、聞いて下さい。実は今日美味しいシフォンケーキが焼けたのです。食べてください!』  篠宮は、このメッセージを見た瞬間、つい独り言が漏れてしまった。 「そうめんも茹でられない人が、シフォンケーキねぇ~。それは楽しみだ……」    そう呟いた後、篠宮は三宅倫が送信した時刻をあらためて見つめ直すなり、返信ボタンを押して、メッセージを打ち込んだ。 『倫、エイプリルフールって、午前中しか嘘を付いてはいけないの知っていますか? シフォンケーキ楽しみにしていますね』    ……そして、同時刻。そのメッセージを読んだ三宅倫は青ざめていた。 「えっ、えっ、エイプリルフールって、午前中しか嘘ついちゃいけないの!? 私シフォンケーキなんて作った事ないのに!」  そう自室で叫びながら、三宅倫は大慌てで買い物の準備をして、玄関を飛び出すのだった。    
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