3人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
四月一日、午後零時半。
篠宮蓮弥のスマホが『キンコーン』とメッセージを受信した旨の通知を訴えた。
篠宮は、ブロッコリーを摘まんでいる箸を弁当箱に立てかけて、代わりに、弁当箱の横に置かれているスマホを取り上げた。
スマホの画面をタップすると電源が入り、数あるアイコンの内でも、唯一メッセンジャーアプリだけが未読を告げていた。
篠宮は何用だ? と感じながらアプリを起動させると、差出人は隣人の三宅倫からで、メッセージの内容もほんの一言だった。
『蓮弥、聞いて下さい。実は今日美味しいシフォンケーキが焼けたのです。食べてください!』
篠宮は、このメッセージを見た瞬間、つい独り言が漏れてしまった。
「そうめんも茹でられない人が、シフォンケーキねぇ~。それは楽しみだ……」
そう呟いた後、篠宮は三宅倫が送信した時刻をあらためて見つめ直すなり、返信ボタンを押して、メッセージを打ち込んだ。
『倫、エイプリルフールって、午前中しか嘘を付いてはいけないの知っていますか? シフォンケーキ楽しみにしていますね』
……そして、同時刻。そのメッセージを読んだ三宅倫は青ざめていた。
「えっ、えっ、エイプリルフールって、午前中しか嘘ついちゃいけないの!? 私シフォンケーキなんて作った事ないのに!」
そう自室で叫びながら、三宅倫は大慌てで買い物の準備をして、玄関を飛び出すのだった。
最初のコメントを投稿しよう!