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「レイー! 一緒に帰ろ」
艷やかなウェーブの髪を纏めた女子生徒が小走りでやって来た。
雨季は空気の湿度も高く、少し暑い。
走ってきた少女は額に軽く汗をかいている。
自分に追いつくために、スクールから全速力で走って来たのだろうなと考えたレイは、思わず微笑を浮かべた。
父親の赴任先であるこの小さな島に、日本からやって来て一年が経った。
最初は馴染めないのではないかと不安だったが、ハニのように他者に友好的な人が多いこの島はとても居心地がよく、レイはすぐにこの島に馴染む事ができた。
宮野 玲、それがレイの日本名。「レイ」と言う名前はこの島の人たちにも聞き馴染みがあったようで、出会う人たちはみな気さくに彼を「レイ」と呼んだ。
ハニはレイのクラスメイト。
褐色の肌にウェービーな黒髪を邪魔にならないようポニーテールに纏めており、そのスタイルが快活な彼女によく合っている。
くっきりした目鼻だちが特徴的な綺麗な女の子だ。
レイはスクールに入った時からしっかり者の彼女に色々と教えて貰っている。
セカンダリスクールの試験でレイは常に首席だった。
それを知ったハニは、自分に勉強を教えて欲しいとレイに頼み込み、レイがスクールに入学して一年経った今でも、それが続いている。
「ハニ、マニア先生との話は終わったの?」
ハニと呼ばれた少女は、とびきりの笑顔をみせる。
「進路のことで相談していたの」
「進路?」
「うん、レイは来年はニッポンに帰るのでしょ?」
「あー、父さんのここでの任期が終わるし、日本での大学進学を考えてるから、来年再来年は日本の高校に通って受験に備えようと思っているよ」
いたずらっ子のような微笑を浮かべて、ハニがレイを見つめる。
何か言いたげな彼女の視線に気づいたレイが尋ねようとした時、囃し立てる声が響いた。
「よぉ! ハニ! またその生っ白いのと一緒にいるのか? そんなやつ放っておいてオレたちと遊びに行こうぜ」
クラスメイトのアリイとテモ、それにチョセバだった。三人はレイとハニのクラスメイトで、ラグビーチームに入っている体格のしっかりした少年たちだった。
リーダー格のアリイはハニがお気に入りのようで、何かにつけてハニを誘っているが、ハニは靡かない。
アリイの悔しさのはけ口はハニと一緒にいる、レイに向けられた。
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