頭の少年

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 何だよ、今のは………。腰を抜かしかけた橋爪に、再び頭だけの少年が訴える。 「たす………けて、おじちゃん。もう動けない………」  俺はまだおじちゃんじゃねえし、サバゲーと二次元が趣味のヲタで美少女以外の幽霊は専門外だ。悪いがその辺で地縛霊にでもなってくれ。そう思う橋爪に追い打ちをかけるように、さらに訴えてきた。 「おなか………が………すいた」  ここで逃げ出して祟られてもかなわない。己のお人好し加減にうんざりしながら、恐る恐る段ボール箱の中を確認した。 「何だこりゃ?」  よく見れば、頭だけの少年は人造物のようだ。さらに箱の中には、胴体や手足と思われるパーツが無造作に詰め込まれている。また、充電ケーブルらしき物も雑に丸められていた。 「スリープモードに移行します」  プログラムされたらしい音声が流れると、少年は目を閉じた。  ショックから立ち直った橋爪は、人造物を観察し始めた。単純なプログラムに沿って話すだけでなく、橋爪を認識して会話を成立させている。相当高度な技術が詰め込まれた人型ロボット(ヒューマノイド)に間違いなさそうだ。バラバラにされた手足や胴体も、きちんとジョイント部分から分解されており、損傷は見受けられない。  だが、バラされているとはいえ、これほどの完成度のロボットが何故無造作に廃棄されているのか?実験体として評価試験後に処分するにしても、機密保持の面から完全に再生不能にして処分するのが普通だ。  橋爪の大学には、多くのグループ会社を傘下に収める財閥系電機大手の資金援助を受けている研究室がある。このロボットの出元はそこかもしれない。連絡して回収してもらうか。だが、出会いこそ衝撃的だったものの、穏やかに眠るような表情を見せるバラバラの少年を、橋爪は感じ始めていた。  もっとコイツのことを知りたい。もっとバラバラにしたい………。
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