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ヒューマノイド
二日後。橋爪のアパートには、バラバラの少年が帯電防止シートの上に並べられていた。
好奇心で後先考えずコンテナから回収したものの、見つからないよう持ち出すのは困難だったため、宅配荷物に紛れ込ませアパートへ送っておいたのだ。
電子機器に静電気は禁物だ。実験用の帯電防止服に着替え、手首にアースベルトを装着すると外装に当たるシリコン製の皮膚を慎重に剥がす。骨格や内部機構を守るプロテクターは、おそらくチタン製。元に戻す際に分からなくならないよう、スマホで写真を撮りながらネジを外し、内部機構を露わにしていく。
胴体内の多くを占めるのがバッテリー、マザーボードとグラフィックボード、ジャイロセンサー、昇圧回路など。GPSやナビゲーションシステムも組み込まれているようだ。
もっとも、橋爪は工学部電子工学科在籍とはいえ、自作PCですらまともに動いたためしがない落ちこぼれ、ただの勘だ。
頭部は検知・認識用か。両目はステレオカメラを兼ね、レーダーセンサーも搭載している。メモリー保持と予備電源用の小型バッテリーが後頭部に見えた。マイクやスピーカは耳と口に搭載されている。表情を動かす筋肉に当たる部分は複雑過ぎて、手に負えそうもない。
関節部は複雑なジョイントと球関節が組み合わされており、三次元的な動きを可能にしている。作動はサーボモーターやソレノイドを使ったアクチュエーターだ。
当初は良好な状態と思われたが、部品を外していく都度、あちこちに損傷が見られた。
基盤を取り外し、焼き切れた電子部品や液漏れしているコンデンサなどのハンダを溶かして取り外す。配線の多くも引き直しが必要だろう。メモリーやメインCPU、GPUなどには異常はなさそうだ。
また、バッテリーセルは汎用の円柱型リチウムイオン、入手には困らない。三十本一パックを七パック積んでいる。但し、この手のバッテリーパックはセルが一本でも不具合になれば、充電不良や熱暴走を引き起こす可能性がある。面倒でも充電後、すべてテスターに掛ける必要があるだろう。
翌日、秋葉原の電気街で必要部品を揃えると、すぐに修理に取りかかった。基本的に元に戻すだけだが、一度バラした電子部品が元通り稼働するかは分からない。だめなら再度バラして不良箇所の特定をしなければならないだろう。
マザーボードやグラフィックボードに新しい部品をハンダ付けし、元の位置に戻した。
結局バッテリーは三十五本に不具合が見つかり、頭部の予備電源と合わせ交換している。配線も同じ規格の同じ色で揃えたが、胴体から頭部に繋がる一本にどうしても手が入らず、手持ちの中で一番細いハンダごてを無理矢理突っ込んで接続した。
修理が終わるまで二週間。胴体や手足の接続を済ませたその日、充電しておいたバッテリーパックを収めコネクターを繋げた。。
外しておいたシリコンの外装をつけると大分人間らしい姿に戻ったが、顔の部分が上手く填まらず少し変顔になった。まあ、本人に分かりはしないだろう。
緊張しながら、胴体にある起動ボタンを押した。
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