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お人好しの彼女らしいが、まったく間違っている。
僕はシーラの遺したトラブルについて情報が欲しいだけなのだ。
ただ、夕方合流ということならばそれまでに調べものが終えられるのでタイムスケジュール的には好都合だ。
「わかった。新宿の「鳥鷹」で17時に落ち合おう。僕が奢るよ」
そう言って、通話を切った。
なんだか喜んでいた。
バイトしながら演劇をやっているとなると、自腹で飲みに行くのも大変なのだろう。
奢りの一言でコロコロ信条が変わる。
「時間があるのはいいか。……こんな面倒なこと、誰がやりたいってんだよ」
9時過ぎたあたりで、直近で仕事を依頼されていた相手に少し延長することになったという謝罪を伝える。
そこまで急ぎの申請があった訳ではないので、打ち合わせの予定などの延期がだいたいだ。
僕程度の行政書士にくる仕事なんて、数は多くないから、トリアージをして有線順位の高い順に連絡すればそれまでだった。
集中できなかったが、それでも昼までには終わっていた。
あとは、フラッシュバックのように襲いかかる嫌な記憶を脳裏から振り払いつつ、時間を使うのが大事になっていく。
ただし、シーラのことを意識することによって忘れられない過去が蘇ってきて、それがことごとく吐き気を催すものばかりというのが最悪だった……
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