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わかりやすいぐらいにストレートに聞いてきた。
こっちの都合を慮る時間はもう過ぎ去ったということだろう。
このあたりが咲止唯という女のわかりやすくもあり、扱いが難しくもあるところだ。
芝居なんて言う繊細な仕事を志すにしては、あまりにも直截的すぎる。
だから、僕は咲止が役者として花を咲かすだろうとは微塵も思っていない。
「シーラが死んだことで僕が受けたのは、忘れかけていた昔を思い出してしまったということだ」
「へえ、意外と忘れられるもんなんだ」
「どんなにエゲつない話でも時間っていう薬はけっこう万能なものってことさ。でも、ようやく夢に見なくてもすむと思ったら、このざまだよ」
「ごしゅーしょー様」
「……でも、そんなことはまだマシだった。マシなことがあるって気づかされた。それで、君を呼び出したわけ」
咲止は眉をひそめた。
意外と色っぽい。
悩みがなさそうなボーイッシュなキャラだから、そんな細かいギャップがいいのだろうか。
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