4人が本棚に入れています
本棚に追加
「一年ちょっとで二人は多いかもね」
「そうだな」
「偶然とは思えないってのはあるよ。春目の関係者が二人だからさ」
「……どういうことだ」
「あんた、柿沼が一年の終わりに春目に粉かけていたっての知らないの?」
「俊が? まさか。そのときは、僕とシーラはもう付き合っていたんだぞ。そんなこと……」
「否定できんの?」
咲止はややきつい言い方をした。
春目シーラという女は、彼氏がいても他の男に靡いて浮気するような女じゃないと否定できるのか、そう言外に聞いているのだ。
何も言い返せなかった。
大学一年の頃なら応えられただろう。
僕の彼女をバカにするな、と。
だが、散々傷つけられて大学時代を無駄にした今の僕は言葉を飲み込むしかない。
喉の奥が焼けただれたようにひりひりした。
シーラという毒を飲み干した経験のある僕だからこそ感じ取れる火傷の痛みだった。
最初のコメントを投稿しよう!