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「いや。でも、あいつの初めては僕だった」
「そう。確かにそう。だけど、あたしら女子はちょっと違う噂を聞いていたよ。後期試験の後、処女じゃなくなったあいつはなんかチョーシにのって、男の誘いをあしらう自分が可愛いとかモテるとか言いふらしだしていたって」
「――そういう話は止めろよ。死んだ相手だぞ」
「その死んだ奴の話を聞きに来たのが、あんたじゃん。墓を暴けば腐臭が出るもんだよ。死んだばかりならなおのこと」
「日本は火葬の国だ。死んだらなんもかんも消える」
手元にあったビールを思いっきり呷る。
一気飲みなんてしたことないけれど、しないと保たない。そんな気分だった。
「イラつかせるなよ。あいつのことではずっと悩まされてきたんだ」
「……だったら、話を聞きたいなんて呼び出すなよ。トラウマなんでしょ」
「必要以上にトラウマを深掘りさせんなってことだ。こっちはそれなりにマジな内容できてんだから」
ここでようやく、咲止の表情に翳がさした。
僕の事情を測ろうとするような乾いた視線を向けてくる。
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