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本棚に追加「…痛っ」
見れば左のひとさし指から血が出ている。
「大丈夫か? 今井」
「もお、せんぱい、ぽやっとしてるからー」
そのとき、午前の練習を終えた部員たちがどやどやともどって来た。
「なに空輝ちゃん、流血?」
台所をのぞいた三年の先輩が声を上げた。
「あ、包丁で切っちゃって。大したことないです」
視界にぱっと入ってくる血の色って妙に目立つんだよなと思いながら答えた。
「アキ」
突然だったから、逃げもかくれもできなかった。三年の先輩を押しのけるようにして、ユウが入って来た。俺は指の痛みも感じなくなって立ち尽くす。
「清田。バンドエイド」
「え? あっ、はい!」
武藤さんの、「救急箱は玄関だ」という声を背にぴゅっと飛んでいく清田。
「大丈夫か?」
この程度のけがなら自分で処理しなければならないし、いくら俺でもそのくらいできる。
でも俺は、ユウのこわいくらいまっすぐな目で、動けない。一ヶ月間距離をとっていたのが無意味と思えるような。そうだ、乱暴なくらいのまっすぐさだ。
清田の持ってきた絆創膏を、左のひとさし指の第一関節に巻きつけて貼ってくれる。
「…ありがと」
指と指のふれあった場所が、やけどのように熱い。
「気をつけろよ」
「…うん」
うつむいてかろうじて礼を言えたのは、周囲に人がいたからだ。誰もいなかったら、きっと泣きながら逃げ出していた。
食器のぶつかりあう音、部に代々伝わる特製スパイスの匂い。
どうして、こんなことするんだよ。

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