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宣言通りにスマホを作り終えたおじいちゃんが、私に一台、フリーカさんに一台を渡す。湖での一泊を飛ばすために、朝早くから起きてるせいで少し眠たい。
フリーカさんにお別れをしてから、外に出ればまだ朝日が昇る前だった。
「おじいちゃん、早い、ね」
寝ぼけながら言えば、おじいちゃんは私が眠いことにすぐ気づいて抱き上げてくれる。
「馬車の中で寝てたらいい。膝を貸してやろう」
「うぅん……」
パタパタという羽音が耳元で聞こえて、眠たい目を擦れば昨日の妖精さんが私の周りを飛んでいた。
「ミドリが気持ちよく寝れるようにおまじないをかけてあげる!」
きゃっきゃっと楽しそうな声に、魔法使えないんじゃなかったけ? と思ったけど、声には出さないでうなずく。くるくると私の周りで踊ったかと思えば、おでこに軽くキスをした。
来た眠気に、あくびが出る。
朝早くて眠いのか、おまじないが効いたのかはわからないけど眠くなってきてしまった……。
***
長く眠っていたらしい。この前のコテージ近くまで来ていた。あっという間に感じてしまう。起きれば、膝の上でエメが寝ていたし、エメの上で妖精さんはくつろいでいる。
「おはよう」
隣でかくん、かくんと寝落ちているおじいちゃんを起こさないようにこっそり二人に声をかける。二人とも小声で「わんっ」と「おはよう」を返してくれた。
今になって思えば、早く妖精の街に来なきゃって思った理由はなんだったんだろう。ラビリたちがダンジョンから戻ってくるまで待てばよかった。
昨日の焦りの理由はわからないまま、馬車はコテージの場所に近づいていく。馬車の外を見ながら声に出してみれば、妖精さんが答えてくれた。
「急いだ理由なんだったんだろう」
「私の不安のせいかも」
「えっ?」
「居場所もないし、何もできないし、わぁああってなってたところにミドリが手を差し伸べてくれたから。私の感情を読み取っちゃったのかな? って」
「よくあるの?」
「うーん……」
妖精さんは唸りながら、エメの上から飛び立ち、私の手のひらの上に座り直す。
「あんまり多くはないけど、共感性が高い人はそうなりやすいって昔先輩が言ってたから」
「そうなんだ……」
「私も人間と会うの初めてだから、わからないけど。ミドリが特別な気がする」
「どうして?」
「私と同じ魔力の匂いがするの! 妖精の仲間たちもこんな匂いしなかった」
妖精さんが干からびていた時を思い出す。水の魔法だけでは回復しなかった。フリーカさんは水を! と服の色で判断していたけど。もしかしたら、聖魔法もしくは、太陽魔法が関係しているのかもしれない。
「ねぇ、その服の色ってみんなと同じだった?」
妖精さんに聞いてみると、妖精さんは服の裾をギューっと引っ張ってから考え込む。
「もう少し明るい水色だった気もするけど、わからない……」
「そっか」
私が行った妖精さんの街の、妖精さんたちの服を思い出そうと、脳みその奥をひっくり返してみたけど水色だったことしか思い出せない。
「あ、」
「ミドリの知ってる妖精さんも同じ色だったの?」
「ううん、全員じゃないけど。ウィンリルの服がキラキラ光ってたなと思って」
他の妖精さんと違って、ウィンリルの服はあの神殿みたいなところで確かにキラキラ光っていた。魔法のキラキラかと思ったけど、もしかしたら、ウィンリルは特別な妖精さんだったのかもしれない。
「会ってみたいなぁ」
「今から会えるよ」
「受け入れて、くれるかな。こんな私のこと」
心配そうに髪の毛を指で梳かしたり、服の裾を引っ張ったり落ち着きのない妖精さんに笑いかける。
「きっと大丈夫」
ウィンリルなら大丈夫。理由はわからないけどそんな確信があった。コテージが見えてきたところで馬車が止まる。
リクラスさんが馬車の扉を開けて、泉の方を指さす。
「私たちは、泉までしか行けませんが……ここからの方が近いはずなので行きましょう」
「おじいちゃん起こさなきゃ」
「起きてる起きてる」
寝てると思っていたおじいちゃんがパチンとウィンクをして私を見る。いきなり声を出すからびっくりしたけど、私たちの話をどうやら聞いていたらしい。みんなで馬車を降りてから、泉へと向かう。
「ミドリがいると、獣すら出てこないな……」
歩きながらおじいちゃんがびっくりしていて、私の方が驚いた。これくらいが普通かと思っていたのにらそうじゃなかったらしい。
「いつもはもっといるの?」
「そうだな、だからルーラはウォンを寄越したと思ってたんだが……すごいなミドリ」
私にはなんで寄ってこないかはわからないけど、私のおかげらしい。ちょっと恥ずかしくて、カバンの紐を引っ張ってごまかす。
「誇っていいんだぞ」
「そうですよ、ミドゥリ」
二人して褒めてくれるから、嬉しくてついスキップになってしまった。
泉は相変わらず静かでキレイだ。
泉まで来たけど、妖精さんに会うにはどうしたらいいんだろうか。
泉を見つめながら考えていると、くすくすと聞き覚えのある笑い声が耳に届く。助けた妖精さんの服を右手で掴んで、左手でエメの首に手を回した。
「おじいちゃん、リクラスさん! 多分いってきます!」
「気をつけるんだぞ。どうにもならなくなったら、ルーラのお守りを握って魔力を込めろ!」
ふわふわと浮き始めた私におじいちゃんが声を張り上げる。おばあちゃんからもらったお守りに目をやってからら大きい声で返事をした。
「うん!」
体がビューンっとまた空を飛んでいる!エメはと言えば、周りを飛び回っている妖精さんに今にも飛びつきそうなくらい興奮しているし、助けた妖精さんは目をキラキラさせて周りを見渡している。
飛べないって言ってたし、それに、他の街の妖精さんに会うのが初めてなのかもしれない。
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