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雨粒がトタン屋根を叩く音を聞きながら女は布団にもぐりこんだ。秋だというのにうんざりするほど蒸し暑く、今朝から降り続いている雨はいっこうに止む気配がない。陰気な天候と肌にまとわりつくような湿気、それから時々起こる家鳴りの音が女の不安を一層かき立てた。
「ねえ、さっきの車。やっぱり変じゃなかった?」
女は隣にいる主人にそう言った。けれど彼はもう夢の中に足を半分踏み入れた状態だったらしい。むにゃむにゃと言葉にもならない返事しか返ってこなかった。
ため息をついて湿気た布団の中で寝返りを打った。窓にかかった薄い紺色のカーテンの向こうで、街灯がチカチカと点滅しているのが見えた。
ああ、なにか嫌なことが起こりそうな気がするわ。
女は枕元に伏せてあったスマートフォンの電源を入れた。
0時27分。
そのとき窓の外で、耳をつんざくような絶叫が轟いた。それは間違いなく、死を目前にした人間が出す断末魔の声だった。
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