魂の記憶(幸の作品)

1/1
前へ
/3ページ
次へ

魂の記憶(幸の作品)

私は、まだ5歳。 と、いうことになっている。 私の初恋は、前世の小学四年生の時だった。 彼はまだ、私を覚えているだろうか? 私は、おじいちゃんに聞いてみた。 「ねぇ、おじいちゃんの初恋って誰だったの?聞かせてよ」 おじいちゃんは、困っているみたいだった。 …やっぱり、私の事なんて、覚えてないかな? 寂しい。… 突然おじいちゃんは、語りだしたんだ。 私との思い出を! 私達が初めて会話したあの雨の日の事を。 おじいちゃんの目には涙が浮かんでいる。 そうだね。あの雨の日から私達はおしゃべりする事が出来るようになったね。 私も貴方の事がずっと前から好きだったんだよ。 あの時言えなかったけど。 貴方と初めて会ったのは、私が小学四年の時だった。 学校の講堂で並んでいた時、貴方は私の隣にいたね。 あの時から気になっていたんだよ。 初めてキスした時も、覚えていてくれたね。 あの時、私の頭の中に、音楽が流れていたんだよ。 貴方と同じ曲「愚かななり、我が心」が。 不思議だね、貴方と同じ曲を聴いていたなんてね。 私が亡くなる前に、もう一度貴方に会いたかった。 でも、貴方は結局私の元へ来なかったね・・・・・。 貴方は階段を登る私を見ていてくれたね。 そして、最期に頭の中で、「愚かなり我が心」が流れていたことを 貴方は教えてくれた。 私もあの曲を聴きながら、天国の階段を昇って行ったの。 おじいちゃん、覚えててくれたんだ。 私の心の中に灯がともるよ。 暖かい灯がともったよ。 おじいちゃん、私、おじいちゃんに逢うために生まれてきただよ。 私、まだ貴方に恋してるんだよ。 あの時のまま、ううん、あの時よりもっと、好きだよ。 いつか、おじいちゃんが逝く時は、今度は私が見送るね。 「愚かなり我が心」のレコード、かけてあげるね。 初恋は実らないって言うけど、ホントだね。 でも、私、一生忘れないよ。 あの日の、初キスのこと。 二人で聴いた 「愚かなり!我が心」を 私の初恋も、おじいちゃんだったから。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加