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魂の記憶(幸の作品)
私は、まだ5歳。
と、いうことになっている。
私の初恋は、前世の小学四年生の時だった。
彼はまだ、私を覚えているだろうか?
私は、おじいちゃんに聞いてみた。
「ねぇ、おじいちゃんの初恋って誰だったの?聞かせてよ」
おじいちゃんは、困っているみたいだった。
…やっぱり、私の事なんて、覚えてないかな?
寂しい。…
突然おじいちゃんは、語りだしたんだ。
私との思い出を!
私達が初めて会話したあの雨の日の事を。
おじいちゃんの目には涙が浮かんでいる。
そうだね。あの雨の日から私達はおしゃべりする事が出来るようになったね。
私も貴方の事がずっと前から好きだったんだよ。
あの時言えなかったけど。
貴方と初めて会ったのは、私が小学四年の時だった。
学校の講堂で並んでいた時、貴方は私の隣にいたね。
あの時から気になっていたんだよ。
初めてキスした時も、覚えていてくれたね。
あの時、私の頭の中に、音楽が流れていたんだよ。
貴方と同じ曲「愚かななり、我が心」が。
不思議だね、貴方と同じ曲を聴いていたなんてね。
私が亡くなる前に、もう一度貴方に会いたかった。
でも、貴方は結局私の元へ来なかったね・・・・・。
貴方は階段を登る私を見ていてくれたね。
そして、最期に頭の中で、「愚かなり我が心」が流れていたことを
貴方は教えてくれた。
私もあの曲を聴きながら、天国の階段を昇って行ったの。
おじいちゃん、覚えててくれたんだ。
私の心の中に灯がともるよ。
暖かい灯がともったよ。
おじいちゃん、私、おじいちゃんに逢うために生まれてきただよ。
私、まだ貴方に恋してるんだよ。
あの時のまま、ううん、あの時よりもっと、好きだよ。
いつか、おじいちゃんが逝く時は、今度は私が見送るね。
「愚かなり我が心」のレコード、かけてあげるね。
初恋は実らないって言うけど、ホントだね。
でも、私、一生忘れないよ。
あの日の、初キスのこと。
二人で聴いた 「愚かなり!我が心」を
私の初恋も、おじいちゃんだったから。
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