会いたいよ

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会いたいよ

 ふとしたタイミングで会いたくなる。  これはもう脈なしなんだろうと思っている頃に、時々「今度、会った時」みたいな話をされるから、もう会えないわけじゃないのかもしれないと期待させられる。  そうは言っても、理由もなしに会いたいとは言えない。  そう、会うには理由が必要。でも忙しそうだからそんな簡単に会いたいとは口にできない。    それなのに思い出すと、無性に会いたくなる。  こんなに人に会いたいと思うようなことはほとんどないのに。  会った日のことを思い出すと、胸が締め付けられる。今、この場にあなたがいないことは苦しい。  苦しいけど、その苦しさを感じた分だけ、好きな人がいるという実感を得る。  好きな人もいない味気ない時間より、私は思い出せば苦しくて、ベッドの上で布団をぎゅっとしながら好きに触れる方がずっと満たされているように思う。  そういうものは会わなければその分だけ、消えていくはずなのに、感情が消えない。  だから私は会いたくなったら、好きを自覚する。  相手の姿を浮かべる。もう会わずに何か月も過ぎているのに、色褪せずに相手の一挙手一投足を思い出し、胸を一杯にする。    単なる友達であって、好意的なものは一切ないとわかっていて何度も忘れようとしても、相手のことをふとした時間に思い出してしまう。これは迷うことなく、恋。  どうにかして会えないかなと考えるけれども、怖がりな私はその話に一切、触れない。いつ連絡が途切れてもおかしくないこの状況で、私は今日も1人、会いたいという思いを抱えて眠る。
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