3.美味い!

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3.美味い!

 まずは真っ先に目に入った、綺麗な層を幾重も巻いた卵焼き。口に入れる前からもう唾液が溢れて来て仕方がない。よだれを垂らさない様に気をつけながら、じっくり噛み締める。  めっ……ちゃくちゃ、うまいっ!!  まじ、めっ……ちゃくちゃに激うま!!  次に目についたのは、きらきらと白胡麻の輝くきんぴらごぼう。これもいつもの弁当の定番だ。濃い味付けにご飯が進む。  今日は外だからおにぎりにしたのか。一緒に入っていたおにぎりの包みを開けてきんぴらの余韻を残しつつ大きく頬張る。  米うっま!! 中身は安定のシャケ!  きんぴらにシャケと米! 間違いない! まじで、間違いない! 美味いに決まってる!  夢中になってガツガツと食べていた俺は、あまりの勢いに喉に詰まらせてしまって「うっ」と言って胸元を叩いた。 「だ、大丈夫ですか! 前田くん、これ!」  隣にいた吉野も慌てて水筒からお茶をコップに注いで渡してくれた。  冷たいお茶が喉を潤していく。  ああ、なんか俺、今めちゃくちゃ幸せなんだけど。  空腹を超えた後の飯って、こんなに美味いんだ。感動して涙すら込み上げて来る気がする。  ほぼ食べ終えた弁当から、吉野に視線を向けると、柔らかい笑顔で微笑んでくれていて、うかつにもドキッとしてしまった。 「美味しかったですか? 足りましたか?」  不安そうに聞いてくるから、俺は最後に残しておいたタコさんウインナーを頬張ってから、吉野に笑った。 「美味しかった! ごちそうさまでした!」  足りないなんてことは全然なくて、いつもよりも何倍にも吉野の想いを感じた気がする。
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