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って、そんなことを考えている間にも時間は刻一刻と過ぎていくし、俺の空腹は悲鳴を上げ始めている。
どう言うことだ?
待ち合わせは一時間も前のはずだぞ。
めずらしく俺は時間通りぴったりにここへ来たんだ。別に、『外でピクニック気分でお弁当にしましょう』って言われたことが嬉しかったからとか、『たまには場所を変えて、学校以外の場所で美味しいもの食べさせてあげたいんですけど……』とか言うあいつが可愛い、なんて少し思ったとか、そう言うことでは決してなくて。
あいつはとにかくしつこいんだ。いくら俺が突き放そうが追いかけてくる。だから、もう振り払うことは諦めたんだ。仕方がなく。
はぁ……それにしても、だ。
あいつの言う通りに朝飯は極力減らして、腹を空かせて時間通りに来たんだ……
まじでふざけんなよ? こんだけ待たせといてヘラヘラ笑って現れでもしやがったら、徹底的に明日から無視してやる! 弁当だって受けとってやんねぇーし!
立ち上がる気力もなくへなへなとベンチに倒れ込んで頬をつけると、世界が横向きに変わった。
「おにいちゃん、どうちたの?」
目の前にしゃがむ、横向きのまだ言葉もおぼつかない小さい男の子。俺の顔を心配そうに覗き込む。
ぎゅうきゅるる……と、またしても腹が鳴る。別に子供に聞かれたからって恥ずかしくも何ともないが。
「おなか、ちゅいてるの?」
俺が何も言わずにいると、男の子は困った様な顔をしてから、いきなり自分のほっぺたをつねり出した。
「いててて……」
「……なに、やってんだ?」
呆れてつい声をかけると、男の子は照れた様に笑った。
「ぼくのかおをおたべってね、やってあげようとちたんだけど、やっぱりダメみたい。ごめんなちゃい、おにいちゃん」
「…………」
男の子は手を振り母親らしき女性と去っていった。男の子の頬を見て、母親がこちらをキッと睨んだ気がするけれど、俺は別になにもしていない。
「……いや、その前に食えねーし」
男の子の行動に力無く苦笑いするしかない。
スマホが手元で着信を告げる。
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