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きっと用心しているに違いねー。
「安心しろ、香澄。俺だ」
その声の後に、中からチェーンと鍵を開ける音がする。
そして、恐る恐る…といった感じで香澄がドアの隙間から顔を覗かせた。
俺を見た途端に安心した様に息を吐く。
「良かった…本物の千夜くんで…。千夜くんの声に似せた強盗だったら、どうしようと思って…」
「幾ら何でも、もうこの近辺にはいねーだろう。警察に捕まるのも時間の問題だ」
「そうよね…。あ、朝ご飯ありがとう」
「応。…それで朝飯食い終わったら、ウチに来ないか?山村がキーボードの演奏で合格祝いしてーって言っているしよ」
「そうね、行こうかしら。…と言っても、直ぐお隣だけどね」
「じゃあ、待ってるぜ」
俺は香澄に朝飯の紙バッグを渡すと、昨日の夕飯のタッパーが入った紙バッグを受け取った。
天災は忘れた頃にやって来る。
その言葉を俺等が痛感するのは、もう少し先になる。
朝飯後。
片付けも済んで、ひと段落ついたところで、チャイムが鳴る。
ドア穴から外を覗くと、可愛い香澄が映っている。
俺はチェーンと鍵を開けた。
「よお、よく来たな。待ってたぜ」
「今日は、お招き頂きありがとう」
「ああ。玄関先で立ち話も何だ。上がれよ」
「ええ、お邪魔します」
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