門出の祝いと思わぬトラブル

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門出の祝いと思わぬトラブル

「いらっしゃい!香澄ちゃん!待ってたよう!短大合格おめでとう!」 「おめでとうございます」 「狭いが、ここに座れよ。今、コーヒー淹れる」 俺がコーヒー豆をドリップし始めると、司会者ぶった山村がキーボードの前で俺等に言った。 「皆、合格おめでとう!それぞれの新生活を来月に控えた皆に、僕からこの曲を贈るよう!『新しい風に吹かれて』!」 「えっ?!もしかして『ローズ』の?私、大好きよ!」 「僕もです。門出のお祝いに相応しい曲ですね」 山村が楽譜をめくって、指を鍵盤の上に置くと、香澄も鈴木も黙った。 俺もコーヒーを淹れながら、耳を傾ける。 『〜♪〜♪〜♪』 イントロが流れ始め、俺等は静聴した。 歌無しで演奏が続く中、俺は香澄と山村のコーヒーには、砂糖とミルクを入れ、俺と鈴木のは、ブラックのまま、盆に乗せる。 そして、ローテーブルに4つのコーヒーを置くと演奏がサビの部分に入った。 香澄の表情が歓喜の笑顔になる。 そう…このサビの部分が特に良いんだよな。 俺も香澄の隣に座ると、山村の演奏に耳を澄ませた。 5分程でフルヴァージョンの『新しい風に吹かれて』は、終わった。 「僕もカフェ・オ・レ飲みたいから、一旦、中断するー!」 山村は、そう言うと、俺の正面で鈴木の隣に座った。
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