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「……俺、こっちに来た時……突然来たのに、凄く立派な部屋用意してもらってて……お迎えまで来てもらって……凄く嬉しかったし、感謝しました……でも、やっぱり知らない場所は、少し不安もあったし……1人で新幹線とかも初めてだったから、疲れて眠って……そしたら、夜中に、何か…凄く安心出来る夢を見たんです。その時、知らない人の匂いがしました。それから……俺が具合い悪くなって寝込んだ時、優しく頭を撫でてくれた人が居て……父さんと同じ頭の撫で方で、安心するなぁと思ったら……夢の中で嗅いだ匂いと同じ匂いがして………。だから……加賀美さんの匂いがすると、凄く安心するんです。それで……多分……眠ってても、無意識に、そうしてしまったのかも……しれません……すいません」
そう言って、加賀美さんを見ると、
あれ?
加賀美さん、顔が少し赤い?
「顔も見せずにコソコソやってた事にまで、ちゃんと感謝してくださるとは、結君は本当にお優しい方ですね?」
えっ?……と?
どういう意味?
「あの……?」
佐久間さんに聞こうとすると、
「結君。この人の、こんな顔なんて、滅多に見られませんから、記念写真撮っておきましょうか」
「え?」
よく分からないけど……
気にしなくていいって言ってくれてるし、機嫌が悪い訳でもなさそう……だよね?
「佐久間……ふざけてないで、さっさと、そのスーツを預かって片付けろ!」
あれ?
やっぱり機嫌悪い?
「照れ隠しに、人に当たらないで下さい」
「何だと?」
「結君。この人は、機嫌が悪い振りをしてるだけですから、安心して下さい。嬉し過ぎる感情を、どうしていいのか分からないだけです」
「佐久間!もう口を閉じろ!」
嬉し過ぎる?
照れ隠し?
じっと加賀美さんを見ると…
「うっ……その………お前の話を聞いて……機嫌が悪くなどなってない……からな。つまり……その……だから……」
加賀美さん……
やっぱり少し顔赤いし
なんか、言いづらそう……
言いづらい事、言わなくていいのに……
「あの……言いづら…」
「俺の……」
「え?」
「俺の匂いくらいで……そんな…安心出来るなら……好きな物を…持って行けばいい……と思うが?」
……加賀美さん…
俺の話聞いて……
「ぶっ…」
え?
「コホン……失礼致しました」
佐久間さん……
下向いて、ぷるぷるしてる……
「加賀美さん……ほんとにいいんですか?」
「そう言ってるだろう」
「えっと……じゃあ、胸ポケットに入ってる、このハンカチ、持って行ってもいいですか?」
「ポケットチーフか。構わない。持ってけ」
やった~!
加賀美さんの匂いの物
「ありがとうございます!」
「良かったですね、結君」
「はい!」
「結君は、最強ですね?」
「…はい?」
「何でもありません。さ、その上着は置いて、そろそろ駐車場へ向かいましょう」
「はい!」
そうして俺は、加賀美さんから貰ったハンカチを握り締めて、佐久間さんの跡に続いた
少しだけ振り向いて見た加賀美さんは、とても優しい顔で、見てくれていて……
嬉しくて、俺が笑うと、
少し驚いた後、優しい笑顔で応えてくれた
父さん……
俺、迷惑ばっかりかけてるのに
加賀美さんは、凄く優しいです
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