プロローグ

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プロローグ

俺には双子の兄、彩仁(あやと)が居て、いつも一緒で、同じ物を見て笑っていた 幼い頃は、お互いの考えている事が分かる様な不思議な感覚があった 同じタイミングで同じ事を考える だから、お互いが何をしたいのか、何を選ぶのかが分かり、それは確信めいたものがあった 訳も分からないままに、俺達は決められた道を進み始めていたが、まだその意味を理解してはいなかった ただ、俺と彩仁と佐久間と3人で、ずっと一緒に居られるくらいにしか思っていなかった 小学校に入ると、目に見える数字という形で評価が始まった 成績が悪い訳でもなく、たいして気にしてはいなかった ただ、いつも一緒に居た彩仁が傍に居ない、それは、とても居心地が悪かった 自分で友達を作らなくては…… 俺の周りには、いつも人が集まってきた 自然と友達はできるものなのだと思った けれども、学年が上がると共に次第に違和感を感じ始める 俺が何か話さなくても、俺の周りには常に人が居た そして、その輪の中に入って居た奴が、急に1人になって居る事がある そうすると、決まって、そいつの親が経営している会社が危ないだのと、勝手に話が入ってきた ああ……そうか 学校での友達というものは、そういうものなのだと知った 俺の家の会社がそうなったら、俺の周りには、誰も居なくなるのだろう ある時、苦手な教科のテストが返された 今までで最低な点数に、がっかりしていると、いつも群がってくる奴が、たまたま俺のテストを見て…… 「えっ……」 そう一言だけ言った 驚きだけではない、信じたくないと言う様な……裏切られたとでも言いたい様な……そんな顔をしていた 馬鹿にして笑われた方がマシだった 家がいくら立派だろうと、それに見合う人間でなければ、認められないのだと知り、俺はひたすら勉強した また、あんな顔されるのは、ごめんだ けれども、どれだけ勉強しても不安が襲ってきた 少しでも自信がないと、テストの前日には悪夢を見るようになった 両親からも友達からも見捨てられ、皆俺を置いていく どれだけ必死に追いかけても追い付かず、俺は1人置いていかれ、絶望的な孤独感に陥っていると、誰かが手を握ってくれる 彩仁だった それは、圧倒的な安心感で…… 目を覚ますと、いつも彩仁が本当に手を握り 「大丈夫だよ」 そう言って、頭を撫でてくれた 一緒に居る時間が短くなったせいか、幼い頃の様に、彩仁が考えてる事は、分からなくなっていた それでも、彩仁は何かを感じ取るのか、そんな夢を見る時は、不思議と必ず傍に居て、一緒に眠ってくれた
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