プロローグ

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せっかく与えられたポストを守る為、父の期待に応える為、必死に働いた 佐久間の優秀なサポートもあり、どうやら期待に応えられているようだった ふと、彩仁の事を考える 当時は分からなかったが、振り返ると、探偵まで使わせた彩仁の捜索は、案外早く打ち切られたように思う 恐らく、何か情報を掴んで、公表するべきではないとしたのだろう きっと、加賀美の力を使ってどうにかしなくてもよい環境で、どうにか生きているのだろう そんなある日、一通の手紙が届く 彩仁からの手紙だった 彩仁は、朝比奈 彩仁になっていた 妻が居たが亡くなった事 自分が死んだ後、息子に会って欲しい事 その後の事は、俺に任せる そう書いてあった 自ら加賀美から離れたというのに、何故息子に会わせたがっているのか? 息子は3歳と書かれていた 俺達が死ぬ頃には、息子だって、もう、いい歳だろう どんな話を聞いて来るのかは知らないが、必要なら、少しの経済的援助くらいしてもいいか…… 俺が彩仁より長生きしていたらの話だが…… 彩仁の息子……俺の甥…… 俺は、佐久間に身辺調査を命じた 手紙の返信はその後考えるとしよう 彩仁は小さな教会で牧師をしていた 暖かい人達と、ひっそりと暮らしているらしい 彩仁はいつからそれを望んでいたのだろう じゃあ、何の為に期待通りの道を進んでいたのだろう? 考えている事も分からなければ、生きている世界も違う 俺は手紙の返信をする為の、一言目が見付けられないまま、彩仁の暮らしを、佐久間を通じて見守っていた 彩仁からの手紙が届いた10年後 朝比奈 結からの手紙が届く それは父が死んだ 俺に会いに来るとの内容だった 彩仁が……死んだ? 死んだ…… 俺は一言も彩仁に返せないままなのに…… 何も……分かり合えないまま…… 彩仁は、今度こそ本当に消えたのだ 息子に会ったら何か分かるだろうか? 兄の息子は……どんな子供なのだろう? 俺の甥は……
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