俺だって

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「……ところで、透哉。叶の運転は大丈夫なのか?」 大丈夫なのかとは…… 大丈夫じゃないのか? 「……どういう事だ?佐久間。そいつ、自分で運転してなかったか?」 「日本での手続きもしてありますし、フランスでも普通に運転していたみたいなので、こちらへ来て1ヶ月程経った頃、急用で叶に車を出してもらったのですが……フランスとの違いなんでしょうか……死ぬかと思いました」 「透哉、お前が運転しろ」 「いや、さすがにもう慣れてるって。ってか、佐久間…よく来て1ヶ月で乗ったね」 「急いでたんだ。そして……そんな恐ろしい運転するなんて思ってなかったからな。右折車なのに突っ込んでくわ、左折するのに変な軌道描くわ、大きな通りに出た途端思いっきりアクセル踏み出して……もう終わったと思ったよ……」 「……叶にハンドルを握らせるな」 「いや、だからさ、それはまだフランス感覚が抜けきれてなかっただけで……ああ見えて、あいつ今まで無事故だから、大丈夫大丈夫」 何故、無違反と言わない…… 本当に大丈夫なのか? 「まず、叶の運転をチェックしろ。そして、とりあえず明日はお前も一緒に乗れ。危ない様なら、すぐに運転を変われ」 「まあ、俺も結君と一緒に居るのは楽しいから、全然いいけどね」 「しっかり、確実にシートベルトを締めさせろ」 「ぶっ……シートベルトくらい、中学生なんだから、自分でしっかり確実に締めれるだろ?」 何笑ってんだ?こいつは さっきの佐久間の話を聞いたら、全く笑えないぞ 「いいから。お前が、ちゃんとチェックしろ!いいな?」 透哉を睨んでやる 「うっ……分かったよ。分かりました」 「……ん……」 朝比奈 結が、寝返りを打って、反対を向くと、叶が、眠ったまま近付き、後ろから抱き締める 「……ん?……ん……」 くっ付いてんのが嫌になったんじゃないのか? それなのに、後ろから抱き締めるなよ 俺が、引き離してやろうと近付こうとすると、 ちゅっ 「……ん~?……」 ………は? こいつ、今、何した? 朝比奈 結の、うなじの 辺りに…… は? 勢い良く歩き出すと、 「待った待った!伊織、落ち着いて!」 「どけろ、透哉」 「フランスだから!あいつ、夢ん中フランスで、挨拶してんだよ!」 「……夢見て、あんな事するような奴、近付かせるな」 「分かった!俺が叶を結君から離してやるな。お前が行ったら警察沙汰になりそうで怖い!」 「……さっさと引き剥がせ」 「はいはい」 透哉が叶を引き剥がそうとすると 「……Non!」 透哉の手を払いのける 「おい、叶!嫌だとか言ってる場合じゃないんだって」 そう言って透哉が、ぐいっと引き剥がすと、ようやく仰向けで寝始めた 「ったく、明日からはそいつに、マスクをして寝かせろ」 「いつまでも遊んでないで、そろそろ部屋へ戻って休みますよ?」 遊んで?…… こいつ! 「じゃあ、透哉。明日の予約出来たら連絡してくれ」 「分かった」 「さ、伊織、行くぞ」 「おい、佐久間……」 「寝不足は、人相悪く見えるぞ?」 「………」 腹が立つが、笑顔も出来ないのに、これ以上人相悪くなる訳にはいかない 仕方なく、黙って佐久間の後をついて歩き出す 明日は、ちゃんと話さなきゃならないからな 今は、それが1番だ
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