俺だって

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叶と食事をするのが嬉しそうと聞いていたので、今日は全員で食事をする事にした 「結、これあげる」 「結君、無理しなくていいですからね?叶は、自分の嫌いな物を人にあげようとしてるだけです」 「でも、せっかくなので。じゃあ、叶さんの好きな物あげます」 「ほんと?!結、優しい!」 どっちが子供なんだ? けど、この前の朝食より、楽しそうに見える 「こういう食事は口に合うのか?」 「はい!どれも凄く美味しいです!こんな豪華な食事食べた事ないですし、こんな立派な場所で食べた事もないです」 「……そうか……外食やパーティーは、あまりなかったのか?」 「俺の家、全然お金に余裕なかったので、外食はほとんどした事がありません。でも、パーティーは時々ありました。教会で働いてる人達や、その家族の誕生日を皆で祝うんです。畑の野菜や、それぞれ持ち寄った物で、全然豪華じゃないけど、皆で料理を作って食べて、凄く楽しかったです」 畑の野菜…… 皆で料理…… それは、パーティーなのか? 俺が知ってるパーティーとは、だいぶ違う 俺は……凄く楽しいだなんて思った事はない 「そうだな……それは、楽しそうだな」 「はい!」 食事が半分程進んだ頃 ポツリ ポツリと雨が降ってきた 「降ってきましたか。今日は午後から雨の予報でしたからね」 「おっと、傘、車の中だな。でも、雨の日本庭園も、なかなかいいものだね」 叶の言葉に、庭を見る 雨は、どんどん本降りになっていく ふと、結を見ると、同じく庭の方を見てはいるが、なんだかぼーっとしている 庭から視線をずらしても、食事をする訳でもなく…… 「……おい…」 名前を呼ぼうとすると 「…………っ………っ……」 「結君?」 透哉が気付いて結の方を見る 「……はっ……はっ……」 透哉と叶が顔を見合せる 結は、驚いてる様な、そんな顔で、おかしな呼吸をしている 「おい、透哉……」 声を掛けると、透哉が頷く これが……発作…… なんで……今……? 「……はっ……はっ……」 「結君、ゆっくり息しようね」 「結、横にするよ」 なんだ……これ…… 体は固まったように、力を入れ 必死に息をしているようで、変に力を入れて吸いこんでいる 不安そうな表情で…… 「結君、少しずつでいいから、ふぅ~って息吐こうね」 「結、大丈夫だよ。すぐに治まるからね」 透哉と叶が、両側から手を握って声を掛けている 結は、ずっと必死に息をしていて…… 汗だくになっている…… 「……佐久間…」 「はい」 「……あれで……本当に大丈夫なのか?」 「過呼吸は、ほっといても、そのうち治まります。ただ、本人には永遠に続くかの様な不安と苦しみでしょうからね。安心すると、少しは早く落ち着くかもしれませんよ?行ってあげたらどうですか?」 佐久間に言われ、結の傍へと行ってみる 「……はっ……ふぅう~……はっ…はっ……ふぅう~……」 透哉の言う通りに、必死で息をしようとしている 「そうそう。結君、上手。ゆっくり、ゆっくり」 「結、だいぶ落ち着いてきたよ。もう大丈夫」 そうしてしばらくすると、結の呼吸は落ち着いていった そして、他でもない、結が1番驚いた顔をしている 「……大丈夫…なのか?」 「……加賀美さん……すいません……急に……苦しくなっちゃって……」 「……もう、苦しくないのか?」 「はい……落ち着きました。如月さん、叶さん、ありがとうございます」 そう言って起き上がって、笑顔を見せる 大丈夫な訳がない 何が起きてるのか、分からない様な顔で…… 「……っ…加賀美……さん……?」 俺は、何を言ったらいいのか分からず、結を抱き締めた
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