17人が本棚に入れています
本棚に追加
初対面
今日、俺は初めて、まともに朝比奈 結と会う
仕事の都合をつけ、夕食を一緒にし、話をしようと決めた
「……はぁ」
何を話せばいいのか
俺が叔父だと言うべきだろうか
それは、選択肢を奪うのではないだろうか
だが、いつまでもこのままでは居られない
まずは、挨拶だけでも……
「副社長。少し深呼吸でもして、リラックスして下さい。そのオーラで会ったら、結君が緊張して話どころではなくなります」
運転をしながら佐久間が言ってくる
気付いた時には、佐久間も如月も結君と呼んでいた
何故、俺より馴れ馴れしいのか
「どうぞ」
椅子を引かれ座る
正面には朝比奈 結が座っている
右の眉の辺りには傷を覆うテープが貼られている
「あ、あの……加賀美さん…ですか?」
「ああ。加賀美 伊織だ」
「あの……俺、加賀美さんからの返信も待たずに来ちゃってすいません。それから……来て早々、色々迷惑かけちゃってすいません。それなのに、凄く皆さんに親切にしてもらって、感謝しています。ありがとうございます」
待ってましたとばかりに、一気に話し出す
「……体の調子はいいのか?傷は、痛まないのか?」
「はい。全然。熱も下がって、もうすっかり元気です」
そう言って笑う朝比奈 結は、本当に顔色が良くなっていた
「明日、抜糸の為、九条の病院へ受診予定です」
佐久間が横から伝えてきた
「如月が連れてくのか?」
「その予定です」
まさか果実酒をジュースと間違えたり、椅子の角にぶつけて怪我をするだなんて思いもしなかった
「はぁ……」
思わず溜め息を吐くと、
佐久間が咳払いをし、睨んでくる
改めて正面を見ると、くるくるとした目でこちらを見ている
「あの…加賀美さん、父さんとは、いつ位の知り合いなんですか?」
いつ位?
生まれた時からだが……
「……幼い頃から……大学までだ」
そう答えると、
「そうだったんですね」
と、とても嬉しそうな顔をした
食事が運ばれてきたので食べ始めると、朝比奈 結は、少しの間両手を組んで目を瞑り、その後
「いただきます」
と、食べ始めた
「美味しい~」
そう言って、どの料理も本当に美味しそうに食べる
子供とは、こういうものか?
自分が中学の時……
どんな美味しい物を食べたかなんて覚えていない……
ただ、テーブルマナーを学んでいたので、こんな食べ方は、しなかっただろう
ナイフもフォークも使う順番が、あべこべだ
彩仁は、きちんと教えなかったのか?
だが……
せっかく満足そうに食べてるのだから、今はいいか
小さな体なのに、ぺろりと完食した
「ほんとに、どれも凄く美味しかったです!ご馳走さまでした」
朝比奈 結がそう言うと、
「この前のオムレツも、とても美味しかったと言って下さったので、シェフに伝えたら大変喜んでおりました。ありがとうございます」
琢磨さんが、嬉しそうに、そう言っていた
何故だか、皆、俺より親しげだ
最初のコメントを投稿しよう!