照れ隠し

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「叶と透哉が、すぐに…………失礼しました。ノックもせず、大変失礼を……出直して参ります」 「あ、佐久間さん。大丈夫です。急ぐ話じゃないんです。また今度、ゆっくり話します」 佐久間さんが、チラリと加賀美さんを見る 「叶と透哉が迎えに来るのか?」 「はい」 「支度をして、着く頃になったら、駐車場まで、連れてってやれ。結、今度ゆっくり聞こう」 「はい!」 そう言って、加賀美さんは、仕事へと戻って行った なんか、今日の加賀美さん、凄く優しい 「結君の上着と鞄と靴は、そちらです。叶達が、そろそろ到着しそうな時間に来ますので、寛いでて下さい」 「佐久間さん。加賀美さんが俺の事運んだって聞きました。ほんとに大丈夫ですか?」 「……大丈夫ですよ。もう少し成長していたら、ちょっと厳しかったかもしれませんが……」 「そうですか……せっかくのお食事会……台無しにしてしまって、すいませんでした」 「結君が、わざと台無しにしたのではない事を、あの場に居た皆が知ってますよ」 「……はい」 「では、一度失礼します」 皆優しいから、許してくれる でも、俺も、ほんとは凄く楽しかったのに…… 最後までちゃんと、皆で美味しいご飯食べたかったのに…… なんで、こんな病気に、かかっちゃったんだろう 荷物を取りに行き、上着を着て、靴を履く 準備万端で、ベッドの上を整えようとして、スーツの上着が枕元に置いてある事に気付く え……何で? 起きた時は、暗くて気付かなかった 手に持ってみると…… この匂い……加賀美さんのだ! そうだ これ、加賀美さんが、食事会の時着てたやつだ さっきは、別のスーツ着てた …………え?俺? しがみついて、離れなかったとか言ってたもん 俺が離さなかったせいで、加賀美さん、スーツ着替える事になったの?! 俺……何やってるの?! そっとドアを開けて、隙間から覗いてみる 加賀美さんと、佐久間さんだけだ 話し掛けたら、邪魔かな…… 加賀美さん……真剣な顔…… 佐久間さんは、椅子に座って、書類を整理して、加賀美さんの所へ行って、を繰り返している やっぱり話し掛けない方がいいかな そっとドアを閉じようとすると ふと、加賀美さんがこっちを見て、目が合った! 「どうした?」 慌てて、スーツの上着を持ったまま、加賀美さんの元へ行こうとして、 「あの、これ…」 ゴンッ 「った~……」 開けた反動で、閉まってきたドアに、思いっきり額をぶつけた 「おい!」 「結君!」 加賀美さんと佐久間さんが、慌てて駆け寄って来た 「……ってて……大丈夫です」 「赤くなってるじゃないか!」 「大丈夫ですよ、この位。それより結君、どうかしたんですか?」 「これ……俺が離さなかったせいで、加賀美さん着替えしたんですか?」 これは、上司とか部下とかの話じゃない 完全に迷惑でしかない! 「結君が離さなかった訳じゃないですよ。副社長が、自分で置いたんです」 「おい!……」 「……加賀美さんが、自分で?」 「そうです。ね?」 「……お前が……それを探してる様子だったし……枕元に置くと、落ち着いた様子だったから……俺が、勝手にそう思ってやった事だ。気にしなくていい」 だって…… それは……
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