希望的観測

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希望的観測

佐久間さんと駐車場で待っていると 車が入って来た 「結君。行きましょう」 「はい」 佐久間さんと歩き出すと 車が勢い良く向かって来た と、思ったら キュキュキュ~ッと、勢い良く方向を変えて止まった すご~い ガチャ ドアが開き、叶さんと如月さんが降りて来る 「結~!見た~?」 「はい!叶さん、運転凄いです!」 「はははっ」 透哉さんが笑ってる 「……おい。はははっじゃない。なんて運転させてるんだ」 「まあまあ。結君の前で、いいとこ見せたかったんだろ。結君は、変わりない?」 「さっき、盛大にドアに額をぶつけていたが、それ以外はな」 「ドアに?!ちょっと、結君見せて」 如月さんが、俺のおでこを確認する 「大丈夫ですか?痛くない?」 「……大丈夫です。俺、こんなの、しょっちゅうです」 「結は、けっこう、わんぱく?そそっかしい?」 そそっかしい…… 「……そう言えば、父さんに、そんな事を言われてました」 「そっか。帰ろ」 「はい。佐久間さん、ありがとうございました」 佐久間さんにお辞儀をして、車に乗り込む 「叶、普通に運転しろよ」 「分かってる、分かってる」 そう言って叶さんは、勢いよく車を出した 「結君、起きてから、苛められたりしませんでしたか?」 苛め? 誰に? 「いえ。あの……俺のせいで、お食事会…台無しにしちゃって、すいません」 「そんな事は、気にしなくていいんですよ。美味しかったのなら、また今度、皆で行きましょう」 「…はい」 また今度皆で…… 如月さん、優しい… 夕食を食べ、お風呂に入り、薬を飲んで 「結君、おやすみなさい」 「如月さん、おやすみなさい」 如月さんがベッドから離れると、叶さんが話し掛けてきた 「結、伊織に嫌な事言われなかったか?」 「言われてないです。優しくしてもらいました」 「ほんとに?」 「ほんとに」 「だったらいいけど、嫌な事言われたら、悩んでないで、すぐ言うんだぞ?」 「はい。ありがとうございます」 叶さん…加賀美さんの事、あまり好きじゃないのかな 加賀美さん、あんなに…… 「あ!」 「びっくりした~。どうしたの?」 加賀美さんから貰ったハンカチ…… 帰って来て、カバンの中に入れたままだった 「ちょっと、忘れ物」 「忘れ物?電気点けるよ?」 「はい…」 えっと、このポケットの中に…あった! ハンカチを持って、ベッドへと戻る 「ハンカチ?ポケットチーフか?」 「はい。加賀美さんがくれたんです!あ、電気大丈夫です」 「うわぁ…結、そんなの貰って嬉しい?」 「はい!すごく!」 ハンカチを枕元に置く 「ふっ…結が嬉しいならいっか」 そう言って、叶さんは、電気を消した 加賀美さんの会社、初めて見た…… 凄く大きくて立派 副社長室も立派 佐久間さんは、副社長室でも一緒だった ずっと一緒なんだ…… 「結、雨降ってきたよ。傘、差そう」 「うん。父さん、俺も荷物持つよ」 「そうか?じゃあ、こっちの荷物持ってくれるか?」 「うん。貸して……あっ……」 「ははっ。元気なリンゴだな。ちょっと待ってな」 え……父さん、リンゴいらないよ 「…………」 あれ?声、出てない 父さん、行かないで… 俺、リンゴなんていらないってば 行っちゃダメなんだよ 父さん! 「…………!」 何で、声出なくなっちゃったの? 待って! 体も動かない 父さん! やだ…… 父さんと離れたくない 俺1人ぼっちになっちゃう……
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