希望的観測

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………ん? 何か引っ張られ… 目を開くと、結が俺の服にしがみついて、うなされている 「……ん!………っん……」 「結」 「……う……ん……」 怖い夢? 凄く手に力入ってる 「結、起きて。大丈夫。夢だよ」 「ん……ふ…うっ……うっ……」 泣いてる? そうだ!電気! 電気を点けると、 「ん………あれ?叶さん?」 「結。怖い夢見てた?凄くうなされてたから、起こしちゃった」 「……見てた…ような気がします……」 まだ、寝惚けてるのか? 「結がもう覚えてないならいいよ。もっかい寝れる?」 「あ……はい」 枕元のハンカチを握りしめる 電気を消すと、結は、あっという間に眠ってしまった 「叔父だって知らないのに、何か分かるものがあるのか?結」 伊織が、あんな風に結の事を抱き締めたのも驚いたが 結が、伊織の胸の中で大泣きした事に驚いた 挙句、離そうとしても離れず…… ようやく帰って来たかと思ったら、伊織のポケットチーフまで貰って来て 「嬉しそうに握っちゃって」 良かった すやすやと眠っている 「叶。結君寝てるか?」 「さっき、うなされてたから起こしたけど、また眠ってるよ」 「九条が一応見に来てくれるって」 「え~?寝てんだから来なくていいよ」 「そう言うな。あいつも心配なんだよ。綾仁(あやと)の子供なんだから」 「……九条は綾仁と、何回か会っただけなんだろ?」 たった数回会った奴の子供の事なんて、そんなに気にするかね~? 「回数の問題じゃないだろ?現に、綾仁は結君に伝えてたそうだよ。九条には感謝してるって事」 「……透哉は、綾仁とあまり接点なかったのか?」 「まあ、飲み会では何度か一緒になってたけど……俺、変わってる奴が好きだから、元々伊織の近くに居たし……俺には…伊織とは違って、不安もプレッシャーもコントロールしてて、楽しい人生の真っ只中に居ま~す!って感じにしか見えなかったから、あんまり関わらなかったな。いつも人に囲まれてたしな」 「……聞けば聞く程、伊織と双子とは思えない」 だってあいつ、楽しい人生の真っ只中で生きた事ないだろ 楽しくても、絶対別の事考えてるだろ 「……だからさ。多分、色々あったんだろ。伊織を見てるとイラつくし、ムカつくけど……綾仁とも上手く関われてなかったのに、その子供に、どう関わればいいのか……まあ、最近は考えてんだろうなぁって行動が見られるようになったよな」 「けど、ぐずぐずしてると、加賀美社長や会長にバレるんじゃないのか?伊織の意思が決まらないまま、ゴタゴタに巻き込まれたら、結の気持ちどころじゃなくなるぞ」 ここに来る事は、まずない けど、会社は…… 伊織が今居る会社に、社長や会長が来る事は滅多にないが、会社の連中は、俺達の様に、伊織と個人的な秘密を共有してる者達ではない 何処からどんな話が耳に入るか…… 「それは伊織が1番分かってるさ。けど俺は、なんとかなりそうな気がする」 「はあ?何その適当な希望的観測」 「だって加賀美だぞ?加賀美の人間が失踪して、見付かりませんでしたって…終わると思うか?」 「……上は、綾仁や結の事を知ってたって事?」 「……ま、俺の希望的観測だけどな」 「だとしたら、それはそれで……」 ピンポン
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