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透哉と話しながら九条が入って来た
「よ、九条久しぶり」
「相変わらず、挨拶ってものを知らない奴だな」
「結寝てるから、静かにしろよ」
「……ぐっすり眠れてる様だな」
「さっき一度、うなされてたから起こしたけど、また熟睡だよ」
九条が結に近付くと、
「……ん?何か握ってる?」
「伊織から貰って来たんだって」
「ほ~?叔父さん、頑張ってるじゃないか。良かったな」
くっくっと笑いながら、九条が結の頭を撫でる
「起こすなよ?」
「大丈夫だ。ぐっすり眠ってる。昼の発作の時、何か気付いた事は?」
「さあ?別に……雨が降ってきたから、皆で庭の方を見ていたら……って感じ」
「他には?」
「さあ?伊織が、声を掛けたから見てみたら、始まってた。透哉は?何か気付いた?」
「……いや………気付いたというか、気になる事なら……」
透哉が、何か考えている
「気になる事?何だ?」
九条に聞かれると
「……いや、この前初めて発作起こした時も、雨降ってたなぁと思って。ま、偶然かもしれないが……」
「……雨か…いや、天気はけっこうメンタルと繋がってるからな。関係あるかもしれない。それに…もしかすると……」
九条が考え込んだまま黙った
「もしかすると何だよ!気になるだろ!」
「いや……綾仁が亡くなった時の状況って、誰か知ってるか?」
「交通事故って言ってたけど……透哉、あと何か知ってる?」
「いや……そうか。なるほどな……」
あ?
何1人で納得してるんだ?
「何が、なるほどなんだよ」
「実は…佐久間から、綾仁の死亡状況について、出来るだけ詳細に調べろと指示が出されたって連絡があったからさ。もしかして、そういう事なのかなぁ…と」
「指示ね~?じゃあ、伊織も何か気付いたのかもな。あいつなりに考えてんのか…」
綾仁の死亡状況……
結は、確かその場に居たって……
「……今日…伊織に抱き付いたまま、結…小さな子供みたいに泣いてた」
「そうか……そりゃ良かったな」
「九条は、綾仁の事知ってんだよな?どんな奴だったんだ?」
「どんな……そうだな……俺が会う時はいつも、空とか、植物とか見てたな。同じ大学の学生なのに、あいつだけ別世界で生きてる感じだった」
空とか植物……
そんな大学生居るか?
ってか、伊織と双子ってとこから、どんどん離れていく
「初めて会ったのは、飲み会で……俺は加賀美兄弟の噂しか知らない程度だったけど……綾仁は、多分…皆の羨ましいを詰め込んだ様な奴で、常に沢山の人達に囲まれて、楽しそうに笑ってた。…その後何度か2人で会った時の綾仁とは、まるで違った印象だったな」
「好かれる振りをしてたのか?」
伊織に必要な技術だぞ
「おそらく…自分でそうしてる事に気付いてなかったんだと思う。加賀美の完璧な御曹司を、無理して演じてる事に気付いてなかったんだ……だから、無意識に1人になれる場所を探してたのかもしれない。俺は、たまたまその場所で会ってしまったから……」
「結は、父親に似てるのか?」
「顔か?…まあ、面影があるな」
「顔な訳あるか!性格だよ」
「それは知らん。俺は、たまたま皆には見せない様な側を知ったが、それだけが綾仁じゃないからな。けど……自分を騙して無理するところは、似てしまったのかもしれないな?」
そう言って九条が、もう一度頭を撫でた
自分を騙して……
騙さないと、前、向けなかったって事?……
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