初対面

2/4
前へ
/48ページ
次へ
せっかくの機会なのだから、俺も話さなければ 話して、朝比奈 結がどうしたいのか探って、これからの事を決めなければ 「お前は……中学1年だろ?父親が亡くなった後、どうやって暮らしていたんだ?」 「……俺の母さんは、俺がまだ3歳の時に亡くなりました。それからは、父さんが全ての事をしてくれて……だから、俺も大きくなるにつれて、色々手伝うようになってって……」 彩仁が全てを…… 加賀美の家を出てから、そんな事が出来るようになるまで、どうやって暮らしていたんだろう…… 「こんな事言ったらおかしいと思われるかもしれないけど……なんとなく父さんは、俺が大人になる前に死ぬって思ってたんじゃないかなって……」 「……どういう事だ?」 「ほんとの事は、分からないけど……母さんが居ないから、万が一に備えてただけなのかもしれないけど……料理を含めて、俺1人でも生活していける色んな事を教えてくれて……全然裕福な暮らしなんかしてなかったのに、ちゃんと俺の為の貯金がしてあって、そういうのとか、父さんの保険金とか、俺じゃ分かんないような事を、代わりにやってくれる人まで決まってて……まるで、いつ死んでもいいように準備してたみたいでした……」 本当は俺に頼みたかったのだろうか…… 妻を亡くしてすぐに手紙を送ってきた彩仁…… あの手紙には、自分に何かあったら息子に会って欲しいと書いてあった どうして、そう思ったのかは分からないが、俺がまだまだ続くと思っていた未来が、そんなに長くは続かないかもしれないと、彩仁は思っていたのか…… だったら……1度くらい会いたかった 「あの……だから俺、ちゃんと生きていけるんです。きっと…教会の人達も、俺が困ったら助けてくれます。父さんは、加賀美さんに面倒見てもらいなさいとは言いませんでした。ただ……詳しい事は分からないけど、父さんにとって、凄く大切な人だって事と、俺に会ってもらいたいって思ってたのは分かるから……どうしても会ってみたかったんです。加賀美さんの都合も聞かずに来て、沢山迷惑かけてすいません。あの……俺が居る事で大変な思いばかりさせてしまって……その…もし帰った方がいいのなら、帰ろうと思います」 帰る? 今、こいつは帰ると言ったのか? いきなり来て、人を散々振り回した挙げ句、今度は突然帰るだと? 俺が彩仁の何かも分かってないのに? 俺はまだ、こいつの名前すら呼んでないのに? 「……そうか。勝手にしろ」 「え?」 「佐久間、如月に、帰る為の準備を手伝うように言っておけ」 「あ……あの……」 「悪いが、仕事が残ってるんだ。これで失礼する」 「あ……今日は、ありがとうございました」 後ろから朝比奈 結の声が聞こえたが、俺は、振り向かずに歩いた
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加