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「さてと結君、何にしますか?九条先生はお金持ちだから、遠慮せず何頼んでも、幾つ頼んでもいいんですよ?」
「うっ……まあ、病院の食堂の物なんて、たかが知れてるからいいけどな」
3人で食堂前のサンプルケースを見る
「えっと……じゃあ、チャーハン食べてもいいですか?」
「お?チャーハンでいいのか?」
「結君、チャーハンと何か頼んでもいいんですよ?」
「おい、如月。いちいち余計な事言うな」
九条先生と如月さんは、仲良しだ
皆でご飯を食べ始めると、如月さんが、昨日の加賀美さんの話をし出した
「はぁ……あいつはガキか。まだ、そんな中途半端な事やってんのか」
「な?結君が可哀想で……」
「あの……でも、そもそも俺が加賀美さんの都合も聞かずに来てしまって、沢山迷惑かけたのが悪いので……帰るタイミングは、加賀美さんの都合のいい時で構わないです」
俺がそう言うと、九条先生がじっと見てきた
「君は彩仁…お父さんから伊織の事をなんて聞いてきたんだい?」
「父さんの大切な人だって。大切なのに、1度も家に来た事ないし、会いに行った事もないし、どうして俺が会いに行くのが父さんが居なくなった後なのかも分からなかったけど、……でも、本当に大切そうに話してたから、会ったら何か分かるかなと思ったんですけど……俺の気持ちだけ優先させて迷惑かけちゃいました」
「君はまだ子供なんだから、それでいいんだよ。後は大人がどうにかするんだから」
そう言って九条先生が優しく笑ってくれた
「父さんが、九条さんって人に救われたんだって言ってました」
「救われた?」
「はい。父さん、かなりの変り者で、それを皆には見せない様にしてたんだけど……九条さんは、父さんと同じものを見て、一緒に綺麗だって感じてくれたんだって。それが凄く嬉しくて、そういう人が居るんだって思うだけで、救われたんだって言ってました」
「………そうか」
「はい。あと、自分らしい生き方が出来て、今こうして笑っていられるのは九条さんのお陰だとも言ってました」
「…………そうか……ははっ。参ったな」
そう言って九条先生は、メガネを外して、少しの間目頭を押さえていた
「君のお父さんは、別に変り者だった訳じゃないんだ。たまたま、周りに同じ様に感じられる人が少ない環境だっただけなんだ。皆、下ばかり見てるからね。俺は、君のお父さんに出会ってから、よく虹を見るようになったんだよ」
「そうですか……父さんは、しょっちゅう空を見ていました。だから、俺もしょっちゅう見てました」
「そうか……幸せだったんだな。良かった……」
父さん、ちゃんと九条さんに伝えられたよ……
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