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我に返ったのは、屋台で捌かれるそれを見た瞬間だった。
捌かれていたのは、錬金術の成れの果て──合成獣の肉だった。
侵略国は戦争で役に立つと予測した合成獣を大量に作っては、廃棄し、また作ってを繰り返し行っている。
ゴミとして処理される大量の死骸を、この国は食料として引き受けているのだ。
幼馴染なの、とユナが屋台を営む青年の一人を指さした。続けて声をかける。
「リュイ、元気?」
「おお、相変らずって感じ……」
リュイが僕をじっと見た。探るような目つきのまま口をひらく。
「どうしたぁ、そいつ」
「お客様よ」
「へぇ、どうも」
「いつも私たちが何食べてるか知りたいって言うから、連れてきたの」
「じゃ食うかい? おいしいよぉ」
リュイが口元を吊り上げた。目は笑っていない。アームカバーの腕で、串焼きを差し出される。
僕は首を振った。
相手を怒らせるような言葉を使ってしまったのは、無自覚だった。
「合成獣は食べるな。寿命を縮める」
「あん?」
「食えば体の中によくないものが溜まっていって──」
はっとした。いつのまにか周囲から話し声が消えていた。みんな足を止めて、僕を見ている。
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