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そのきっぱりとした態度に、思わずつぶやいていた。 「──誇り高いんだね」 「スラムのリーダーもそうしてるから」 「……リーダーもラル族なの?」 「いいえ」 「そのリーダーはラル族の魔力が枯渇するとどうなるか知ってる?」 「さあ?」 そう言うユナの目元に、うっすらと模様が浮かび上がってきていた。ラル族の特徴で、魔物を目にすると文字通り顔つきが変わるのだ。本当は自分の意志でコントロールできるはずだけど、それもできなくなっている。 「ユナ、僕の説明を聞いて。ユナたちラル族が生きていくために必要な栄養素は魔物の中に一番多く含まれる。ユナたちが今食べている合成獣にも多少は含まれているよ。でも、それじゃ足りないんだ。このままではユナは早くに亡くなってしまう」 模様のせいで凶暴な目つきに見えるユナが、僕に言い放った。 「私はここで生きている。どんなにお腹が空いたとしても、それを食べて、私一人だけが生き延びるわけにはいかないの」 「スラムのリーダーと話をさせて」 「何で!? 余計なことしないでよ!」 声は唐突だった。 「──食えよ、ユナ」 誰だ、と身構える。 茜の逆光の中から現れたのはリュイだった。 「俺がスラムのリーダーだよ」 「リュイ、あっち行って。あなたに関係ない」 「そうはいかない。魔物の肉を持ってるとなりゃ話は別だ。学者だか観光客だか知らないが、そいつはユナの命綱だよ」 さっきリュイはみんなを止めなかった。僕を排除しようとした人が、今度は僕と取引をしようという。 僕が排除されたのは、僕が失礼を働いたからだ。わかってはいるけど。 リュイが淡々と切り出した。 「あんたが魔物の肉をもってきてくれるなら、スラムはあんたの味方をする。戦争で情勢が厳しくなって、この国に魔物の肉を持った行商人が入れなくなった」 しん、と静寂がひろがった。 なるほど、という気持ちになる。今日までユナが生き延びてきたのは、やはり、どこかで魔物の肉を口にしていたからなのだ。
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