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信じられない、という顔でユナが問いかけた。 「リュイ、何を言ってるの?」 一拍置いてリュイが話し出した。 「俺はユナの母さんともよく話してた。ユナが壁によく描いてたあの花の模様は、ラル族の言葉を元に、俺とユナの母さんとで考えたんだ。ユナたちに魔物の肉が必要になったらユナの母さんが壁にあの印を描く。俺は行商人から肉を仕入れる。それで、ユナにはわからないように食べさせる」 ぱん、とするどい音が路地裏に響いた。 ユナがリュイの頬をぶったのだ。 「よくも……よくもそんな」 「あの花の意味は『お腹が空いた』だ」 「何よ! 二人してそんな、ちゃんと話してよ!」 ぼりぼりとリュイが頭を掻いた。しょうがなさそうに口をひらく。 「ユナは素直だからなぁ。無理だろ。魔物の肉食ってるのに『食べてません』みたいな顔して俺たちに混じるの。俺以外のやつはラル族に対して『魔物食い』って偏見もあるしさ」 そうだけど、とユナが言い淀む。 こういうのって本当にどうすればいいんだろう。 悩むうちに、全然関係ないところで一つの疑問が浮かび上がってきた。 気持ちを素直に言葉にする。 「ねえ、ちょっと聞いてもいい?」 空気を読まない僕の態度に、思わずといった感じでリュイが言う。 「あんた図々しいな」 「あ、ごめん」 「何だよ。聞けよ」 ぶっきらぼうな声に背中を押されて、僕はユナのほうに向きなおった。 「ユナはどうして花の絵を描いていたの? お腹が空いた、っていう意味を知っていたわけじゃないんでしょう?」 ぐしゃっとユナの顔が歪んだ。 潤む声が茜の光に響く。 「ごはんが……」 声が途切れた。 ややあって、ユナがもう一度言葉を続ける。 「……ごはんが美味しくなるおまじないだって、お母さんが言ったから……おまじないをした後のごはんを食べると、すごく体の調子が良くなったから……」
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