2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「はい、じゃあ今日の練習はここまで! みんな、警備員さん来ちゃうから早く着替えて外集合ね!」
巧さんの声で練習が終わり、各々更衣室へと向かう。私はほぼダンスができる恰好で投稿している為、着替えることなく外に出た。
空は真っ暗で、星が少しだけ見えた。地元ではこれの倍以上の星が見えていたというのに、東京は夜でも明るいせいか全然見えない。それを最初は悲しいなと思っていたが、今はもうその光景に慣れてしまって何とも思わなくなってしまった。
「夕莉」
後ろから声を掛けられて、私は「ん?」と言う。同期の志波が隣に立っていた。
「お前、巧さんに教わってる時顔すげーにやけてたぞ。分かりやすすぎだろ。巧さん、絶対気づくぞお前の気持ち」
「うるっさいな」
私は志波の肩を思いっきり叩くと、志波が「痛っ!」と言う。
「好きバレしたいんだったら別にいいとは思うけど。夕莉はしたくない派だろ」
「勿論」
「じゃあ頑張るしかないな。今の夕莉、めちゃめちゃ分かりやすいから」
「志波の勘が鋭いだけだよ」
「いや、絶対他にも気づいてる奴いるって」
2年前、あの全国大会で私は巧さんに一目惚れをした。他にもすごいダンスを披露する人がいたのに、どうしてか私はずっと巧さんから目が離せなかった。
全国大会の後もずっと巧さんのことばかり考えていた。同じ大学に入りたくて、猛勉強した。SNSでそのダンスサークルのアカウントをフォローした。
そして受かった。新歓の時、他のサークルのチラシなんて受け取らずに真っすぐにそのダンスサークルへと向かった。そこで出迎えてくれたのが、サークル長になっていた巧さんだった。
巧さんは2年前とは比べ物にならないくらいに、格好良くなっていた。ダンスもさらに上手くなっていた。
「告白しないの?」
「するわけないじゃん。だって巧さんには──」
最初のコメントを投稿しよう!