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31、鬼上司は結局仕事を振りまくってくる(side千夏)
あの後、爆発させたキッカケを話すまで離してくれないので仕方なく木ノ下さんの件を伝えることになった。
「……なんでそんなしょうもない相手にムキになるんだよ」
はぁ、と心底呆れたようなため息をこぼされて何も言い返せない。
(そうだけど。ていうか、この人今、しょうもない相手って言った?木ノ下さんのことしょうもない相手って言った?)
「ムカついて……」
ストレートな言葉を思わず吐いたら目が合う。
「わかるけど。相手が悪すぎるわ、なんであんな……」
言いかけて口を噤むから思わず問いかける。
「……あんな?」
首をかしげると久世さんは自分の口を手で覆って咳払いをした。
「これいうとマジでパワハラ発言になるからやめとく」
つまり何かよろしくない言葉を言おうとしたのかと判断して、もうそれ以上追及するのはやめた。
「とにかく。そういうことでしか優越感を感じられないような相手と同じ土俵に立つな、あほらしい。時間の無駄だよ、そんな相手に貴重な自分の時間費やすな、マジで勿体ないわ」
(なんか十分パワハラ発言してると思うけど)は、飲み込む。
「……すみませんでした」
いろんな意味を込めて謝ると、久世さんがジッと見つめてくる。
「今までは言えないこともあって我慢してたのかもしれないけど、もう溜め込むな。これからは言って?」
さらっと頬を撫でられてカッと顔が熱くなった。
「できる限り聞く。なんでも言ってほしい」
そんな胸をフワフワさせるようなセリフ、真顔で言うってなに?これ以上ドキドキさせられたら色んな意味で持たない。
「……はい」
ドキドキが声から伝わりそうだ。絞り出すようになんとか返事して頷くとフッと笑われた。
(イケメンの破壊力。こ……殺される!!!)
家に帰ってからもなんだか信じられなかった。
何度も何度も思い返しては胸をドキドキさせていた。泣いてしまったこと、今まで溜め続けていた気持ちを吐き出せたこと、それを受け止めてもらえて抱きしめられたこと。優しいキスも触れるゆびさきも、どれも生々しく記憶に残ってるから身悶えた。
好きと伝えてしまった。その時ふと気づくのだ。
(あれ?それでどうなるの?)
久世さんはどう言ったっけ?遊びや慰めでキスはしないと言ってくれた。私に結婚や彼氏の有無を聞くということは自分にもいないという意味でいいのか?
(ん?私、好きとか付き合おうとか何も言われてないよな?)
私も好きと言ったけれど付き合ってくださいも何も言っていない。
(んん?だからどうなるの?)
「まだ……久世さんの下で働きたいです」
私はそう言った、それはつまり……。
(部下でいたいです、になるのかな)
だからつまり、上司と部下の関係のまま??
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