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番外編ーその後のふたり―③
不意打ちの好きは、ダメでしょう。
「す――っ、すき、とか、いきなり言うのなんなんですか!?」
「結局何が聞きたいのかよくわかんないんだけど、なに?」
若干めんどくさそうな態度でそんな風に聞かれるけれど、そんな感じもなんならかっこいいな!とか思うのもう重症、どうしよう。
「今なんでそんな、そのぉ……さらっと好き、とか……」
かあぁぁぁぁっと顔が赤くなるのがわかる。もう完全に発熱している、体温がやばい熱い無理。
「え?そこの確認をしたかったってこと?」
「だって、なんにも……」
「あれ?なんにも言ってない?俺」
(まさかの言った気になってたパターン?)
「私、久世さんの連絡先も……知らないんですよ?」
「そういえばそうだな。あまり必要性を感じてなかった」
(そりゃ毎日顔を合わせるけども)
「私も、その……部下でいたいって言っちゃったから。だから……」
「部下だけど、彼女だよね?そう思って接してた。携帯出して」
(彼女!!)
言われるまま携帯を取り出すと流れるようにラインを交換されて、私のラインに久世さんの名前が登録される。
「一切上司の立場で話してないぞ、あの時。めちゃくちゃ私情でぶつけてたけどな、俺」
「へ?」
「焦ったね。辞めたいって言われたときは。バカみたいにムキになって、どうやって引き留めようかって必死だったわ」
「そう、なんですか?」
コクリと頷く姿がなんだか可愛いとか思った気持ちは内緒。
「……忙しくてあんまりかまってやれないかもしれないけど、寂しくなったらちゃんと言って?」
きゅっと手を握られると椅子と椅子がぶつかって久世さんの足に挟まれたと思ったら、そのまま抱きしめられた。
「その時はいつでも抱きしめるから」
ボンっと顔から火が出たかと思った。固まる私の身体をゆっくり剥がして頭を優しく撫でながら見つめられると余計固まる。距離、距離が……近いんだ、どうしよう。
見つめられるから見つめ返す。視線を反らせなくてただ固まっているだけの私の頬を久世さんのゆびさきがそっと触れて親指の腹部分がくちびるをふにっと押さえてくる。
「……っ」
触れられたことに素直に反応してさらに真っ赤に違いない。頬が顔が熱すぎる。もはや微動だにしなくなった私をフッと笑って見つめながら久世さんが言った。
「そんな顔されるとキスで終われないからやめてくれる?」
「……」
「もう暗いから気をつけて帰れよ?家着いたらラインいれといて……聞いてる?」
「――あ、は、はい」
なんとか返事を返したら久世さんがフッと笑って……。
――ちゅっ。
「!」
「おつかれ」
真正面からキスされて、久世さんはそのまま実験室を出て扉が閉じられたら室内が静寂に包まれる。瞬間――止まっていた息を盛大に吐き出した。
(なにあれなにあれなにあれ!!!)
悩んでたのがバカみたいなくらいゲロ甘な久世さんに瞬殺された。
(ど――どえらい人を好きになってしまったかもしれない……)
恋愛下手な私にはかなりハードルの高そうな恋、それがまさにこれから始まろうとしていた。
~本編・完〜
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