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カンナはそれに振り回され気味だったが、口元は微笑んでいた。
そうして、その日カンナは子供達と一日中遊んだ。
すっかり打ち解けたのか、その後も彼らと交流を積み重ねていった。
やはり、子供から仲良くなるという判断は正しかったようだ。それでも彼女の人間不信を考えると、ある意味奇跡のようなものなのだが。
やがて子供達はカンナの存在を知ってもらおうと、比較的年の近い数人の若者達を引っ張ってきた。朗らかそうな人達だった。
そんな彼らも、子供達ほどではないが、時間をかけずに親しくなる。だが中にはカンナを訝しがるものいて、君は一体何者だと尋ねた。
するとカンナは頃合いとばかりに言った。
「私は異邦の魔術師よ。大国から逃げてきたの」
「大国? それはご先祖様達を迫害したという、あの大国かい? しかし魔術師というのは……?」
「……こういうことよ」
カンナは分かりやすく伝えるために杖を掲げた。
すると静かに大気中の魔力が震えた。
海から巨大な水柱が幾つも立ち上る。そこから幻想的な水の龍が飛び出し空を泳いだと思ったら、今度はぐるりと互いにぶつかり、弾けて大きな虹を創った。
「わあ……」
誰もが目を奪われる。
カンナはその後も次々と魔法で綺麗な光景を見せた。
炎の精霊を踊らせてみたり、草原に花を咲かせてみたり。
それは明らかに超常的な力だったが、警戒心は良い意味で薄れているようだった。
そろそろ良いタイミングだ。
カンナは最後に言った。
「実は皆に隠していたことがもう一つあるの。……村の人達も、一緒に連れてきてくれると嬉しい」
既にカンナの存在は村中に広がっている。
彼女のことをどうするか、大人達でも意見は割れていると聞く。
子供と若者達は顔を見合わせ、こくりと頷くのだった。
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