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「美玲、なんか元気ない?」
「え? ああ、まあ、うん……」
いつも元気で前向きな美玲が落ち込んでいる姿はめずらしい。
「何かあったの?」
美玲の顔を覗き込むと、瞼が少し腫れていた。気付いてしまったら心配で放っておけない。
「実は……彼氏とケンカしたんだ。別れちゃうかも」
「えっ……どうして?」
思わぬ展開に私は声を潜める。
「グループデートの日、新田くん連れてきたのがだめだったみたい」
「……なんで?」
「なんで他の男とデートしてるんだよって」
「でも来られなかったのは彼氏のほうだったじゃん」
「そうなんだけどね。あのあと新田くんと二人で遊んだし、私がまったく悪くないかって言われたらどうかな」
「そんな……」
美玲は悪くないはずだ。彼氏が来られないから代理で来てくれた人と遊んで何がいけないのか、私には理解できなかった。まだ彼氏がいたことがないからだろうか。
「前からよく怒られるんだよね。ただの嫉妬ならいいんだけど」
「そっか……」
二人してうつむいてしまう。
「朝から変な話してごめん」
「ううん。私でよければ何かあったら話聞くから」
「ありがとね、春菜」
こんなに元気のない美玲は初めて見た。
なんだか私まで胸が痛む。私が彼氏がいることを嘘だと伝えていたらこんなことにならなかったかもしれないのに。
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