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お昼になっても、美玲は元気がないままだ。無理やり笑顔を作ろうとしているのも痛々しい。でも私は二つのお弁当を持って席を立つ。
「……あの、ごめんね、お昼は」
「もちろんオッケーオッケー! いっといで!」
美玲以外の二人が笑顔で見送ってくれる。美玲も笑ってはいるけれど、少しつらそうだ。彼女のことが気になったけれど龍くんにお弁当を渡さないといけないし、教室を出た。
今日のお弁当は気合いを入れすぎて、時間がかかってしまった。朝にお弁当を渡すことができないほど、夢中で作っていた。
いつもの場所に顔を出すと、ベンチに龍くんが座っていて、ほっと胸を撫でおろす。
「……龍くん」
土曜日は変だったし、怒ってるだろうから来てくれないかと思った。
「よかった、来てくれて」
「春菜いないと俺の弁当ないし」
土日の素っ気なさがなくなっているのはお弁当のおかげらしい。私はさっそく青いほうのお弁当箱を彼に手渡した。
「はい、お弁当」
「サンキュ」
龍くんはさっそく蓋を開ける。すると、「お」と声を上げた。
「なんかすげえ豪華」
「……うん。龍くんに謝ろうと思って、がんばった」
おかずは、龍くんの大好きなハンバーグ。それからいつもの卵焼きと、エビフライにマカロニサラダとタコさんウインナー。野菜そっちのけで、龍くんの大好きなものを全部詰め込んだ。
「謝るって、何をだ?」
「デートのこと。あの日なんか怒ってたでしょ?」
「……ああ」
やっぱり思い当たる節があるらしい。
「それになんかクラス中に知れ渡っちゃったみたいで……ごめんね」
「そんなの別にいいよ」
「でも、もう無理して彼氏のフリすることないから。あ、もちろんお弁当は作るから」
お弁当は何があっても作り続けるつもりだ。お弁当を作る楽しさは前より増えているし、何より龍くんが喜んでくれる顔が見たいから。
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