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「……本当に付き合えばいいじゃん」
「え?」
龍くんがぼそりと呟く。何を言われたのかわからなくて、私は目をまるくしたまま龍くんを見た。
「俺たち」
「ど……え、な?」
動揺のあまり、まともな言葉が出てこない。どういうこと?
「だから、俺を本当の彼氏にすればいいじゃんってことだよ」
丁寧に説明をされても、理解はできない。言っている言葉はわかるのに理解ができないなんて、初めての経験だ。
龍くんがまじまじと私の顔を見つめてくる。目をそらせないほど近づく。
「……龍、くん?」
彼の鼻先が私の鼻先にふれる。近すぎる距離に心臓はありえないほどバクバクと脈打ち、呼吸が浅くなる。
息がふれるほど近づいたその時、きゅう~と可愛い音が聞こえてきた。瞬間、龍くんがぴたりと止まり、距離が一定になる。
「……腹減った」
龍くんは呟くと、箸を手に取りお弁当を食べ始める。私はまだ呆然としたままだ。
(今、何をしようとしたの? まさか……キ、キス……?)
そこまで考えてしまって、身体がカッと熱くなる。
「……真っ赤」
ばくばくとお弁当を食べている龍くんは私を見て笑った。
「なっ……ひどい!」
龍くんのうれしそうな顔を見て、わかった。
からかったんだ。ひどい。ひどすぎる。
(龍くんは女遊びしてるから慣れてるんだろうけど!)
妙な怒りさえ込み上げてくる。でも不思議なことに、龍くんに怒る気にはなれない。
「ごちそうさま」
「う、うん」
私は動揺で、なかなかお弁当を食べ進めることができないでいた。龍くんはお弁当を閉じ、ランチョンマットできれいに包み直す。
立ち上がると、振り返った。
「……春菜。さっきの話、考えといて」
「え……」
返事をする前に、龍くんは立ち去ってしまった。
さっきのって、付き合うって話?
私をからかってるんじゃなかったの?
さっぱりわからない龍くんの行動に、自分にも作った豪華なお弁当を食べきれる気がしなかった。
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