07.嵐の夜

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放課後、駅で美玲と別れ、久しぶりにメイク用品を見に駅ビルに行くか、来週のお弁当のための本を見に行くか悩みつつふらふら歩いていた。途中ぽつぽつと雨が降り始めて、折り畳み傘を差した。予報では夜になるにつれ雨が激しくなるらしい。 「……宇佐美!」 後ろから声をかけられて振り返ると新田くんがいた。 「あれ、新田くん。こんなところでどうしたの?」 新田くんとは最寄り駅は違うはずだ。だから一緒に帰るとしてもいつも学校の最寄り駅までなのに。 「……たまたま用があって。宇佐美見かけたから声かけたんだ。宇佐美は最寄り駅がここなのか?」 「そうだよ」 「ちょうどよかった。ちょっとだけ話がしたいんだけど、いいか?」 「……うん、いいよ」 落ち込んでいる新田くんを知っているので断ることはできなかった。 「彼氏いるのにごめんな」 「え、あ、ううん。大丈夫」 彼氏といえば龍くんのことだ。一瞬忘れかけていて、慌ててしまった。 「まさか相手が黒磐だったなんてびっくりしたよ。オレ黒磐のこと悪く言ったよな……ごめん」 「大丈夫。……それより、あの日美玲とどこ行ったの? 楽しかった?」 龍くんのことを詳しく聞かれたらまずいので、私は話をすり替える。とはいえ、気になっていたことではあった。 「ああ。ゲーセン行ってすぐ帰ったよ」 「そっか」 「菅原、彼氏とケンカしたんだってな。俺のせいだ」 「新田くんのせいってわけじゃないと思うよ」 客観的に見ても、美玲も新田くんも悪いとは思えない。私からしたら彼氏が束縛気味なせいじゃないかと思っている。漫画や雑誌の受け売りだけど。
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