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「……あのさ、宇佐美。立ち話もなんだし、飯食いに行かない?」
「え?」
「また相談したいことがあるんだ。今日はファミレスとか……驕るからさ」
「でも」
前にも奢ってもらったばかりだ。それに、これから雨がひどくなるらしいし早く帰りたいという気持ちもあった。どうしようか悩んでいると、新田くんは傘を持ったまま私に頭を下げた。
「お願い! 行こうよ。大事な話がしたいんだ」
「……大事な話って、美玲のこと?」
「……そう。だから、頼むよ」
新田くんはやけに真剣だ。ここのところずっと落ち込んでいるみたいだったし、頭を下げてまで話したいことがあるのかもしれない。そんな人を見捨てられなかった。
「うん、わかった」
「本当か? よかった……」
新田くんは心の底からほっとした表情をする。そこまで追い詰められていたのだと、彼に同情してしまう。
「このあたりのファミレスでもいい?」
「もちろん!」
新田くんはうれしそうに笑顔を見せる。少し元気になってくれたみたいでほっとした。
「春菜!」
突然、龍くんの声が私の名前を呼んだ。声の方向を振り返ると、こちらへ走ってくる姿が見えた。彼は傘も差さずに、濡れている。
「……あれ、龍……」
今、春菜って呼んだ?
ということはいま彼氏設定にしてくれている。新田くんがいるからだろう。
「龍介くん、どうしたの?」
「……見かけたから声かけただけ。春菜に何か用?」
龍くんは新田くんを睨んでいる。なぜか新田くんも、龍くんに強い視線を向けている。なぜか険悪なムードに慌てた。
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