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「な、なんでもないから! これからファミレスに行くだけ」
「……ごめん。今日は帰る」
新田くんは急に視線を落とす。先ほどの明るさが、またなくなってしまった。
「え? 新田くん大丈夫?」
「うん。ごめん宇佐美」
彼はそのまま私たちに背を向けて行ってしまった。龍くんを彼氏だと思っているから、気を遣ってくれたのかもしれない。
「……新田くん、なんだったんだろ」
「どうかしたのか?」
「ううん。なんかいつもより必死だったから。美玲のことで何かあったのかな……」
「……なんでそこに菅原が出てくるんだ?」
「え? あ、ううん。なんでもない」
新田くんが美玲を好きなことは、人に話すようなことじゃない。龍くんが誰かに話すとは思えないけれど、相談に乗っている身としては秘密にしてあげたい。
「俺、邪魔だったか?」
「新田くんとは今度話すから大丈夫だよ」
ちょっと気になるけれど、しかたない。
「……そっか」
「それより、用があったんじゃないの?」
「いや。あー……俺は今日も夕飯いらないっておばさんに言っておいてくれるか?」
「わかった」
今日も帰りが遅いんだ。結局夜遊びは続けてるんだなあと悲しくなる。
「雨強くなるらしいから気を付けて帰れよ」
「……うん、ありがとう。龍くんもね」
彼は傘を持たないまま、走って行ってしまった。
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