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08.悪い噂
「う、んん……」
カーテンの隙間から眩しい光が差してきて、自然と目を覚ました。
目をこすりながら瞼を開くと、見慣れない部屋にいた。龍くんの部屋だと数秒後に気づく。でも、ベッドに龍くんはいなかった。
ゆっくり起き上がって伸びをする。カーテンを開けると、昨日の嵐が嘘のような晴天だった。
自分の部屋に戻って着替えて、洗面所に寄ってからリビングに顔を出す。するとすでにお母さんたちが帰ってきていた。
「春菜おはよう。昨日は大丈夫だった?」
「う、うん……」
大丈夫だったような、大丈夫じゃなかったような。微妙なラインだ。
「おはよ」
「りゅ、龍くんっ!」
龍くんは一足先にリビングのソファでテレビを見ていた。
「ちょっとどうしたの大きな声出して」
「あ……ごめん」
「龍くんも、昨日はごめんね。代わりに朝ごはん気合い入れたから」
「うれしいです」
ダイニングテーブルにはちょうど朝食が並べ終えたところみたいだ。初めて四人分、並んでいる。
「お父さんもいるんだ」
「ああ。久し振りだなー」
お父さんは忙しいので朝も夜もなかなか会うタイミングがなかった。
「久しぶりにみんなでごはんね。龍くんは初めてかしら」
龍くんはうなずき、ダイニングテーブルに4人が揃った。私の隣には龍くんが座っていて、正面には私の両親。なんだか不思議な光景だ。
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