08.悪い噂

3/8

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
「……あらやだ、二人ともそんなに仲良くなったの? 昔を思い出すわ」 お母さんたちはのん気に笑っている。私は今、動揺で胸がおかしくなりそうなのに。 「最初はどうなることかと思ったけど、仲良くなってくれてよかったわ。ね、お父さん」 「うんうん」 お父さんもうなずいている。 「春ちゃんの弁当がうまいんで、餌付けられました」 「なっ……!」 「春菜よかったじゃないの。料理の練習にもなるしね」 「……そうだけど」 龍くんの手がとまり、横にいる私を見る。 「料理がうまくなりたいのか?」 そういえば龍くんには何も話していなかった。というかむしろ、私が料理をする理由はずっと隠しておきたい。 「彼氏にお弁当作るのが夢なんですって」 「お母さん、ちょっと!」 なのにお母さんがさらっと暴露してしまう。しかも、お父さんの前でも。 「おいおいそれはお父さんも聞いてないぞ。彼氏がいるのか?」 「違うってば! 夢の話で……ってもういいでしょ!」 まさかこんなことになるとは思っていなかった。龍くんだけならまだしも、お父さんにまでバレてしまう 「春菜、ごめんね」 お母さんは両手を合わせて困った顔をする。 「いいよ、もう」 知られてしまったらもう遅い。でもこの場にいるのが居たたまれなくて、なるべく急いで朝食を食べ終え、部屋に戻った。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加