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(……恥ずかしかったぁ……)
龍くんはどう思っただろう。いつかできる彼氏のために料理を練習しているなんて、呆れたかもしれない。
今日は予定のない土曜日だ。気持ちを切り替えて、久しぶりにメイクの練習でもしようかと雑誌を広げ、メイク道具を並べる。すると、ドアがノックされた。
「春菜、部屋入っていい?」
「ちょ、ちょっと待って!」
未来の彼氏のために、料理の練習をしているだけでなくメイクの勉強も知られるのはさらに恥ずかしい。私は慌ててメイク道具を片づけ、ドアを開けた。
「龍くん、どうしたの?」
「勉強教えて」
「え、勉強?」
彼の手には、英語の教科書とノート。
「いいけど、私別に勉強得意じゃないよ」
「こっち来てからついていけなくてさ。期末テスト範囲も教えてほしい」
「聞いてなかったの?」
神妙な顔でうなずく龍くんを、見捨てられなかった。
部屋に招き入れると、部屋中央のスクエア型のローテーブルに二人で座る。テーブルには、現国の教科書や数学の教科書など、一通り並べた。
テスト範囲がわからないなら教えることは多そうだ。
「……ここはねえ」
全教科のテスト範囲を教え終わると、今度は龍くんが一番苦手だという英語の問題を教えることになった。私の成績は、どの教科も満遍なく普通。私にわかるかなと不安を抱えつつも、問題に取り掛かる。
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