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いつもテストに出てくるのは、基本的な単語や文法問題、長文問題だ。
「えーとここは……あれ? どうだっけ」
私も得意というわけではないので、文法がわからなくなる。
「もしかして、こう?」
龍くんはあっさりと答えを導き出す。
「あれ、本当だ! すごい!」
「なんだ、俺より春菜のほうがだめじゃん」
「……ほんとだね、ごめん」
「そんなつもりなかったって、言い過ぎた。ごめん」
龍くんの手が私の頭を撫でる。最近、こうやってふれ合うことが増えた気がする。子ども扱いされているかもしれないのに、嫌な気はしないのが不思議だ。
「春菜、俺は練習台だったのか?」
「え?」
「弁当の話」
忘れかけていた、朝の話を龍くんはまた掘り返してくる。恥ずかしいから龍くんにも忘れていてほしかった。
「練習台っていうか……龍くんパンとか食べてるし、せっかくならと思っただけだよ」
「そっか。春菜は彼氏が欲しいんだな」
「……だって、美玲たちに嘘ついてるし」
今は彼氏が欲しいという気持ちより、そっちのほうが大きくなっていた。ずっと嘘をついていて情けないし、罪悪感に押しつぶされそうになる。
「親友に嘘ついてるんだよ? こんなの、ひどいよね」
「そんなに気になるなら、正直に言って謝って許してもらえばいい」
「……簡単に言わないでよ」
言えないから困っているのに。怒られたり嫌われたらどうしようという気持ちが先行して、なかなか言い出せない。最悪、絶交されることだってある。身から出た錆とはいえ、そんなことになったら立ち直れる気がしない。
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