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翌週の月曜日、学校に行くとすぐに美玲と新田くんに捕まった。
教室ではできない話だと、屋上へ続く階段にまで連れて来られてしまった。
「どうしたの急に」
「ねえ春菜。ちょっと聞いたんだけどさ」
美玲の態度がどこかいつもと違う。いやに真剣で、また彼氏と何かあったのかと不安になった。
「黒磐くん、前の学校でケンカして退学になったって……」
「え?」
思いもよらない言葉に、目をまるくする。
「だからうちに転校してきたって聞いたけど、本当?」
「そ、そんなこと……誰が言ってたの?」
私は知らない。親の都合で引っ越してきたと聞いていた。それだけだ。
「オレの友だち」
新田くんも美玲と同じように真剣な顔をしている。前の人と同じかはわからないけれど、また新田くんの友だちが龍くんのことを悪く言っていたらしい。顔も知らない誰かを、ちょっとだけ恨んだ。
「春菜、気を付けてよね。彼と付き合ってたら巻き込まれることもあるかもしれないよ」
「オレも、黒磐は気を付けたほうがいいと思う」
二人は本気で心配してくれているんだろうけれど、私にしたら納得できない。だって、私の隣にいる龍くんはすごく優しいのに。
「でも、私幼なじみだし……」
小さい頃から龍くんのことは知っている。悪いことをするような人じゃない。それに、再会してからも中身はそれほど変わっていない。
「会ってなかった期間もあるんでしょ? その間になにしてたかわからないじゃん」
「……そう、だね」
龍くんはそんな人じゃない。そう言い返したいのに、言えない自分が情けない。
それほど、知らないことが多い。
こんなに近くにいるのに。
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